2017年10月31日火曜日

【2008年8月配信記事より】アメリカで「成功」する学生たちに共通するもの(後)

【2008年8月配信記事より】アメリカで「成功」する学生たちに共通するもの(後)

※今回は過去のメルマガから人気の記事(August 2008, Vol. 37, No. 1, Part 2)をピックアップして配信しています。

先週に引き続き、布施さんに「留学本では教えてくれない海外大学院のホント」をお送りしてもらいます。前編では、大学院生として成功するためには、英語力・過去の研究歴はあるに越したことはないが、必須条件でもない。一方、複数の仕事を平行してこなす、マルチ・タスキングの能力は、アメリカで成功するためには非常に重要だ、と述べられています。今回のエッセイでは、積極性・自主性・論理性に関して、そして今回のテーマのまとめです。どうぞお楽しみ
下さい!


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留学本では教えてくれない海外大学院のホント~実際の体験から
アメリカで「成功」する学生たちに共通するもの(後)
布施 紳一郎
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●積極性・自主性・論理性

自主性は、研究者にとっては必須と言える性質ですが、優秀な学生においても同様のことが言えます。当然過去の経験の差から、入学当初は研究室の PI のガイダンスを必要とする学生もいます。しかしながら、成功する学生たちは、大学院修了時には必ずと言っていいほど自立していると言えるでしょう。自分の研究テーマを決めるところから実験をデザインし、論文を書くまで独立して行うことができ、研究室内ではポスドクと同様に扱われているケースがほとんどです。

さらに彼らに共通する性質として、積極性が挙げられると思います。優秀な研究者には、大人しく会話を好まない人や、あまりプレゼンテーションを得意としない人もいると思います。ただ、サイエンスに関しては非常に積極的です。興味のあるデータを見れば、質問することに戸惑うことはありません。優秀な学生にも同じことが言えると思います。研究発表やジャーナルクラブにおいて常に興味を持ち、積極的に発言しています。

前にも述べましたが、英語が不得意でも何の戸惑いもなく積極的に質問するのは、やはりサイエンスに非常に熱心だからなのでしょう。ディスカッションやセミナーにおける発言に限らず、新しい手法やテーマに挑戦したり、困った学生がいれば手を差し伸べたり知識を共有するなど、様々なことにおいて積極的であると言えると思います。

これもサイエンティストとして当たり前なことですが、やはり論理性も重要な要素です。もちろん、偶然から大きな発見が生まれることも多々ありますが、偶然を見逃さずそこから証明まで持って行くことができるのは、そのサイエンティストの論理性がしっかりとしているからでしょう。

優秀な学生たちも例外ではありません。彼らは積極的に質問をすると述べましたが、聞いていて「なるほど」「それは面白いな」と、講演者や聴衆もが納得する質問をよくするように感じます。データを批判的に見るということは、誰もが学ぶことであると思いますが、彼らのコメントは批判的かつ生産的(Productive criticism)であるように感じます。これは、しっかりとしたロジックが土台となっていることを反映しているのではないでしょうか。

●当然ながら

最後に、当然ながら彼らに共通する要素として、サイエンスに熱心であり、目的意識がしっかりおり、人一倍働く、ということが挙げられます。上に述べたことは、優秀なサイエンティストの多くに見られる性質ですが、大学院で成功する学生たちも、既に同様の性質を持ち合わせていると言えると思います。さらに言えば、サイエンティストに限らず、アメリカ社会において重要視される性質でもあり、企業が求めている素質でもあるように感じます。私自身大学院を通じて少しは成長できたかな、とは思っていますが、彼らを見ていると、まだまだ自分を磨いていかなければ、と感じさせられることばかりです。


【おしらせ】

カガクシャ・ネット×日本薬学生連盟 特別座談会 "アメリカの製薬企業で研究者として働く" 開催 (日本時間11/4)

 

日本薬学生連盟様の協力により、この度、特別座談会「アメリカの製薬企業で研究者として働く」を開くことになりました。

海外留学について知りたい!
研究者のお話を聞きたい!
製薬企業で働くのってどうなの?
世界で働くってどうなの?
現場の方から、聞きたいこと、知りたいことを沢山質問するチャンスです。


ぜひこの機会をお見逃しなく!
皆さんのご参加を心よりお待ちしております。

日時:
11月4日 (土) 11AM-12PM (日本時間)
11月3日 (金) 7PM-8PM (北米西海岸)
11月3日 (金) 10PM-11PM (北米東海岸)
11月4日 (土) 2AM-3AM (欧州ロンドン)

参加方法: 本イベントでは二種類の参加方法を準備しています!

(1) 座談会上映会に参加
会場: 中央区立産業会館 第一集会室
アクセス:最寄駅 都営浅草線東日本橋駅/都営新宿線馬喰横山駅 / JR総武快速線馬喰町駅 / JR総武線浅草橋駅
http://www.chuo-sangyo.jp/guidance/s1.html
参加登録:以下のフォームから
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfI-YqSeeAEMgUtlaNBsTZRaId7c7SbIM0k9vEK5gUh6oditg/viewform

(2) インターネット経由で座談会に参加

会場: オンライン(Youtubeを利用予定)
参加登録:次のフォームから
https://goo.gl/forms/sBG6W69qqch6y3qZ2

参加登録期限: 10月31日(火)

話し手: 武田祐史
カガクシャ・ネット 五代目代表
京都大学工学部物理工学科、同大学院工学研究科修士課程を経て、タフツ大学の博士課程を修了(Biomedical Engineering)
その後、ブリガム&ウィメンズ病院・ハーバードメディカルスクールでのポスドクを経て,現在はPhosphorex, Inc.の Senior Research Scientistを務める.専門はナノ・マイクロ粒子やエクソソームを用いたドラッグデリバリー。カガクシャ・ネット (大学院留学希望者および経験者のネットワークhttp://www.kagakusha.net/) には2011年から参加し,2013年より副代表,2015年より五代目代表
著書「理系大学院留学」第三刷改訂分の編集協力、「研究留学のすゝめ」(第15章 大学院留学のすゝめ)を執筆

イベントに関して質問等ありましたら、日本薬学生連盟及びカガクシャ・ネットの担当者へご連絡ください。
日本薬学生連盟 担当者:松下 (156035@gifu-pu.ac.jp)
カガクシャ・ネット 担当者:生津 (michiko.namazu@gmail.com)
日本薬学生連盟ウェブページ: http://apsjapan.org/


著者略歴

 布施 紳一郎(ふせ しんいちろう)

 慶応義塾大学理工学部、東京大学院医科学修士、
 米国ダートマス大学院博士課程修了(2008年、免疫学)

 大学院修了後、ボストンに拠点を置く欧米の製薬・バイオテクに特化した
 戦略コンサルティング会社勤務後、 PureTech Ventures のアソシエイトとして、
 Vedanta Biosciences(マイクロバイオーム)、Mandara Sciences(栄養)などの
 バイオテク起業に関わる。

 その後、bluebird bio社 (NASDAQ:BLUE)、事業開発部ディレクターとして、
 遺伝子治療やCART療法技術のライセンス・M&A・アカデミア提携事業の評価、交渉、
 アライアンスマネジメントを担当。現在、米国のヘルスケア分野のトップVCである
 MPM Capital社・プリンシパルとして、Switch Bio、Repare Therapeuticsなどの
 投資を担当、ボード・オブザーバー。

 早期ステージ・ベンチャーの起ち上げから、市場公開株への投資を手がける。
 さらには、日経バイオテク・コラムニストとして、米国市場のトレンドをカバー。

Image courtesy of lekkyjustdoit at FreeDigitalPhotos.net
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カガクシャ・ネットワーク http://kagakusha.net/
(上記サイトでバックナンバー閲覧可)
発行責任者: 武田 祐史
編集責任者: 日置 壮一郎
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