2017年10月31日火曜日

【2008年8月配信記事より】アメリカで「成功」する学生たちに共通するもの(後)

【2008年8月配信記事より】アメリカで「成功」する学生たちに共通するもの(後)

※今回は過去のメルマガから人気の記事(August 2008, Vol. 37, No. 1, Part 2)をピックアップして配信しています。

先週に引き続き、布施さんに「留学本では教えてくれない海外大学院のホント」をお送りしてもらいます。前編では、大学院生として成功するためには、英語力・過去の研究歴はあるに越したことはないが、必須条件でもない。一方、複数の仕事を平行してこなす、マルチ・タスキングの能力は、アメリカで成功するためには非常に重要だ、と述べられています。今回のエッセイでは、積極性・自主性・論理性に関して、そして今回のテーマのまとめです。どうぞお楽しみ
下さい!


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留学本では教えてくれない海外大学院のホント~実際の体験から
アメリカで「成功」する学生たちに共通するもの(後)
布施 紳一郎
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●積極性・自主性・論理性

自主性は、研究者にとっては必須と言える性質ですが、優秀な学生においても同様のことが言えます。当然過去の経験の差から、入学当初は研究室の PI のガイダンスを必要とする学生もいます。しかしながら、成功する学生たちは、大学院修了時には必ずと言っていいほど自立していると言えるでしょう。自分の研究テーマを決めるところから実験をデザインし、論文を書くまで独立して行うことができ、研究室内ではポスドクと同様に扱われているケースがほとんどです。

さらに彼らに共通する性質として、積極性が挙げられると思います。優秀な研究者には、大人しく会話を好まない人や、あまりプレゼンテーションを得意としない人もいると思います。ただ、サイエンスに関しては非常に積極的です。興味のあるデータを見れば、質問することに戸惑うことはありません。優秀な学生にも同じことが言えると思います。研究発表やジャーナルクラブにおいて常に興味を持ち、積極的に発言しています。

前にも述べましたが、英語が不得意でも何の戸惑いもなく積極的に質問するのは、やはりサイエンスに非常に熱心だからなのでしょう。ディスカッションやセミナーにおける発言に限らず、新しい手法やテーマに挑戦したり、困った学生がいれば手を差し伸べたり知識を共有するなど、様々なことにおいて積極的であると言えると思います。

これもサイエンティストとして当たり前なことですが、やはり論理性も重要な要素です。もちろん、偶然から大きな発見が生まれることも多々ありますが、偶然を見逃さずそこから証明まで持って行くことができるのは、そのサイエンティストの論理性がしっかりとしているからでしょう。

優秀な学生たちも例外ではありません。彼らは積極的に質問をすると述べましたが、聞いていて「なるほど」「それは面白いな」と、講演者や聴衆もが納得する質問をよくするように感じます。データを批判的に見るということは、誰もが学ぶことであると思いますが、彼らのコメントは批判的かつ生産的(Productive criticism)であるように感じます。これは、しっかりとしたロジックが土台となっていることを反映しているのではないでしょうか。

●当然ながら

最後に、当然ながら彼らに共通する要素として、サイエンスに熱心であり、目的意識がしっかりおり、人一倍働く、ということが挙げられます。上に述べたことは、優秀なサイエンティストの多くに見られる性質ですが、大学院で成功する学生たちも、既に同様の性質を持ち合わせていると言えると思います。さらに言えば、サイエンティストに限らず、アメリカ社会において重要視される性質でもあり、企業が求めている素質でもあるように感じます。私自身大学院を通じて少しは成長できたかな、とは思っていますが、彼らを見ていると、まだまだ自分を磨いていかなければ、と感じさせられることばかりです。


【おしらせ】

カガクシャ・ネット×日本薬学生連盟 特別座談会 "アメリカの製薬企業で研究者として働く" 開催 (日本時間11/4)

 

日本薬学生連盟様の協力により、この度、特別座談会「アメリカの製薬企業で研究者として働く」を開くことになりました。

海外留学について知りたい!
研究者のお話を聞きたい!
製薬企業で働くのってどうなの?
世界で働くってどうなの?
現場の方から、聞きたいこと、知りたいことを沢山質問するチャンスです。


ぜひこの機会をお見逃しなく!
皆さんのご参加を心よりお待ちしております。

日時:
11月4日 (土) 11AM-12PM (日本時間)
11月3日 (金) 7PM-8PM (北米西海岸)
11月3日 (金) 10PM-11PM (北米東海岸)
11月4日 (土) 2AM-3AM (欧州ロンドン)

参加方法: 本イベントでは二種類の参加方法を準備しています!

(1) 座談会上映会に参加
会場: 中央区立産業会館 第一集会室
アクセス:最寄駅 都営浅草線東日本橋駅/都営新宿線馬喰横山駅 / JR総武快速線馬喰町駅 / JR総武線浅草橋駅
http://www.chuo-sangyo.jp/guidance/s1.html
参加登録:以下のフォームから
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfI-YqSeeAEMgUtlaNBsTZRaId7c7SbIM0k9vEK5gUh6oditg/viewform

(2) インターネット経由で座談会に参加

会場: オンライン(Youtubeを利用予定)
参加登録:次のフォームから
https://goo.gl/forms/sBG6W69qqch6y3qZ2

参加登録期限: 10月31日(火)

話し手: 武田祐史
カガクシャ・ネット 五代目代表
京都大学工学部物理工学科、同大学院工学研究科修士課程を経て、タフツ大学の博士課程を修了(Biomedical Engineering)
その後、ブリガム&ウィメンズ病院・ハーバードメディカルスクールでのポスドクを経て,現在はPhosphorex, Inc.の Senior Research Scientistを務める.専門はナノ・マイクロ粒子やエクソソームを用いたドラッグデリバリー。カガクシャ・ネット (大学院留学希望者および経験者のネットワークhttp://www.kagakusha.net/) には2011年から参加し,2013年より副代表,2015年より五代目代表
著書「理系大学院留学」第三刷改訂分の編集協力、「研究留学のすゝめ」(第15章 大学院留学のすゝめ)を執筆

イベントに関して質問等ありましたら、日本薬学生連盟及びカガクシャ・ネットの担当者へご連絡ください。
日本薬学生連盟 担当者:松下 (156035@gifu-pu.ac.jp)
カガクシャ・ネット 担当者:生津 (michiko.namazu@gmail.com)
日本薬学生連盟ウェブページ: http://apsjapan.org/


著者略歴

 布施 紳一郎(ふせ しんいちろう)

 慶応義塾大学理工学部、東京大学院医科学修士、
 米国ダートマス大学院博士課程修了(2008年、免疫学)

 大学院修了後、ボストンに拠点を置く欧米の製薬・バイオテクに特化した
 戦略コンサルティング会社勤務後、 PureTech Ventures のアソシエイトとして、
 Vedanta Biosciences(マイクロバイオーム)、Mandara Sciences(栄養)などの
 バイオテク起業に関わる。

 その後、bluebird bio社 (NASDAQ:BLUE)、事業開発部ディレクターとして、
 遺伝子治療やCART療法技術のライセンス・M&A・アカデミア提携事業の評価、交渉、
 アライアンスマネジメントを担当。現在、米国のヘルスケア分野のトップVCである
 MPM Capital社・プリンシパルとして、Switch Bio、Repare Therapeuticsなどの
 投資を担当、ボード・オブザーバー。

 早期ステージ・ベンチャーの起ち上げから、市場公開株への投資を手がける。
 さらには、日経バイオテク・コラムニストとして、米国市場のトレンドをカバー。

Image courtesy of lekkyjustdoit at FreeDigitalPhotos.net
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カガクシャ・ネットワーク http://kagakusha.net/
(上記サイトでバックナンバー閲覧可)
発行責任者: 武田 祐史
編集責任者: 日置 壮一郎
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2017年10月2日月曜日

【2008年8月配信記事より】アメリカで「成功」する学生たちに共通するもの(前)

※今回は過去のメルマガから人気の記事(August 2008, Vol. 37, No. 1, Part 1)をピックアップして配信しています。

「留学本では教えてくれない海外大学院のホント~実際の体験から」第7回は、ダートマス大学の微生物学・免疫学で、今年5月に博士号を取得した布施さんが紹介してくれます。布施さんの研究内容、大学院留学志望動機に関しては、こちらからご覧下さい。

● 学生自らが大学院プログラムの運営に関わる(2007年6月配信)
https://goo.gl/zq4mfk

これまでのエッセイでも多くの方が書かれているように、「成功」の定義は各人によって変わってくると思います。ですので、何を基準に判断すればよいのかは、きっと人それぞれでしょう。今回の布施さんのエッセイでは、大学院生としての生産性に焦点を当て、優秀な研究歴を残すためには、英語力・過去の研究歴は果たして必須か、そしてマルチ・タスキングの重要性に触れています。

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留学本では教えてくれない海外大学院のホント~実際の体験から
アメリカで「成功」する学生たちに共通するもの(前)
布施 紳一郎
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日本は非常に高い科学技術力を持つ先進国です。それにも関わらず、日本からアメリカの大学院へ入学する学生の数は、他国からの留学生数に比べて圧倒的に少ない気がします。

留学を希望する学生が少なくないにも関わらず、日本からの留学生が多くないのにはいくつか理由があると思います。まずは出願プロセスが難しく、GRE などの試験で苦戦するケースがあります。しかし、留学を希望するにも関わらず、そもそも出願をしない学生もいるでしょう。出願プロセスを始める前に、「自分はアメリカの大学院で成功するか」という不安から、出願せずに諦めてしまう方もいるのではないでしょうか。

今回の記事では、アメリカの大学院で「成功」する学生たちに共通するものについて、述べたいと思います。もちろん「成功のレシピ」などは存在しませんし、そもそも成功が何を指すのかも曖昧ではあります。ただ、これから出願を考えている、またはこれからアメリカの大学院に留学する、という学生の方々に、私個人の経験と観察から感じたことを伝え、少しでも興味を持って頂ければ幸いです。

大学院博士課程にて「成功」を定義するのは非常に難しいことです。本人自身が幸せで成功したと思えれば、それは成功と呼べると個人的には思います。しかし、今回の記事に限って「成功」の定義を狭め、ファクルティ(先生方)や学生の間で、「彼・彼女は優秀だった」とよく口にされ、卒業までに論文を多く書いたりトップジャーナルに載せ、平均年数またはそれよりも早く博士論文を書き終え、本人たちが希望する職へ就いていった学生を指すことにします。私の所属していた大学院プログラムは、毎年25~30人入学しますが、上の定義に当てはまるのはほんの数人程度です。個人的に見ても、皆お手本にしたいな、と思う学生たちです。さて、彼らに共通する「成功の秘訣」などというものはあるのでしょうか?

●英語力と経験は重要か?
大学院にて成功する学生たちのバックグラウンドは様々です。アメリカ人であったり、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、アジア出身であったりします。私のプログラムに限っては、アメリカ人だから有利であると感じたことは全くありません。逆に、プログラムの1/3程度しか占めないにも関わらず、目立つ学生の約半数は留学生です。むしろ、留学生は健闘していると言えるでしょう。中でも、ラテンアメリカ出身の優秀な学生たちには感心させられます。英語が比較的苦手で、GRE には苦戦するが、研究室に入れば良い仕事をする、という彼らの活躍には、我々日本人も勇気付けられるのではないでしょうか。英語力は論文やグラント(研究費申請)、フェローシップを書くのには有利に働きますが、英語力が直接大学院で成功に比例することは決してありません。

過去の経歴はどうでしょうか?アメリカの大学院に入学する学生の経歴は様々です。大学卒業後、直接進学する人もいれば、数年技官(テクニシャン)として経験を積む人、修士課程を経て入学する人、高校教師や企業で勤めてから大学院へ戻る人、臨床医などもいます。やはり過去に研究歴がある人の方が、多少有利であることは確かです。ただ、大学から直接進学してきた学生の中でも、非常に良い仕事をする人がいます。研究に経験は重要ですが、大学院博士課程の範囲で成功を収めるのには、必須条件ではないように感じます。

●マルチ・タスキング
私が所属していた大学院に限らず、必ずと言っていいほど優秀な学生やポスドク、そして PI(Principle investigator: 独立した研究者)に共通するのは、同時に平行して様々な仕事をこなす能力を有していることです。英語では、よく Multi-tasking(マルチ・タスキング)と呼びます。

ご存知の通り、アメリカの大学院で博士号を取得するためには、研究だけをやっていればよいと言うわけにはいきません。授業のレポートや試験をこなしたり、関門試験(Qualifying exam)の準備をしたり、頻繁に行われる自分の研究の発表や、ジャーナルクラブ(論文抄読会)の準備をしたりなど、研究以外にこなさなければいけないことは山ほどあります。

しかし、成功する学生は、これらの作業を実験と平行してこなしていきます。私のプログラムでは、関門試験の準備をするために研究を止める期間は、学生によって様々ですが、優秀な学生は実験をほとんど止めずに、試験の文章を書き、口答試験の準備を行っている人がほとんどです。授業に関しても同様のことが言えます。さらにその上、彼らは必ずと言っていいほど研究テーマを複数抱え、これらも同時に進めています。しかも多くの学生が家族を持っています。

一般的に言って、優秀な学生は時間を管理する能力に非常に長けてる、という印象を受けます。優秀な PI も、グラントを書きながら研究室の仕事を管理し、講演をこなし、教壇に立つなど、複数の作業を同時にこなしている人たちばかりです。実は企業就職する際に、企業側が学生に求める能力の一つとして、マルチ・タスクする能力がよく挙がり、インタビューにおいても、これに関する質問もよく出てきます。大学院に限らず、またサイエンスに限らず、マルチ・タスキングはアメリカ社会で成功する為には必要な能力であると思います。

○ 次号では、研究者としての重要な資質である、積極性・論理性に関してお送りします。ご期待下さい!



【お知らせ】
ダブルディグリープログラム説明会:兵庫県立大学大学院&カーネギーメロン大学

兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科では、平成23年度よりカーネギーメロン大学と連携して『ダブルディグリー・プログラム』、2年間で2つの修士の学位を取得することができるカリキュラムを実施しています。

本プログラムは、情報工学系と政策経営系を組み合わせて体系化した学際的なカリキュラムで構成されています。また、給付型および貸与型の奨学金制度や留学に際しての語学学習の支援制度も充実しています。
平成30年4月入学者に対する学校説明会を開催しますので、関心のある方は、参加下さい。

【東京】10/25(水)・【大阪】10/26(木)
詳細はこちら(http://www.cmuj.jp
著者紹介

 布施 紳一郎 (ふせ しんいちろう)

 慶応義塾大学理工学部、東京大学院医科学修士、
 米国ダートマス大学院博士課程修了(2008年、免疫学)。

 大学院修了後、ボストンに拠点を置く欧米の製薬・バイオテクに特化した
 戦略コンサルティング会社勤務後、 PureTech Ventures のアソシエイトとして、
 Vedanta Biosciences(マイクロバイオーム)、Mandara Sciences(栄養)などの
 バイオテク起業に関わる。

 その後、bluebird bio社 (NASDAQ:BLUE)、事業開発部ディレクターとして、
 遺伝子治療やCART療法技術のライセンス・M&A・アカデミア提携事業の評価、交渉、
 アライアンスマネジメントを担当。現在、米国のヘルスケア分野のトップVCである
 MPM Capital社・プリンシパルとして、Switch Bio、Repare Therapeuticsなどの
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発行責任者: 武田 祐史
編集責任者: 日置 壮一郎
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2017年8月13日日曜日

アメリカ渡航 Tips 集(2017年秋入学編)

アメリカ渡航 Tips 集(2017年秋入学編)

この Tips 集は、アメリカ合衆国での9月入学に向けて準備している皆さんのために、
メルマガ編集部の担当者の経験を元に、渡航や引っ越しに関連する情報をまとめたものです。渡航のお役に立てば幸いです。

留学相談会(9月)開催のお知らせ:

 留学在籍者・経験者が皆さんの相談にのります!
 ・学校選び、留学手続き
 ・留学中の生活、授業・研究の様子
 ・留学後の進路 など

 分野にかかわらず,大学・大学院留学に興味のあるみなさまのご参加をお待ちしております。
 9月9日 (土) EST 8AM-9AM / 日本 10PM-11PM
 申し込み最終締め切り:9月7日(木)

 参加ご希望の方は以下のURLより、参加フォームにご記入をお願いいたします。
 https://goo.gl/forms/loQEuEUvsQ9Qpb4H3



1.準備編

渡航時に必要なお金

TAやRAなどでアメリカで給料がある場合でも、支払いは9月からというケースが多く、月初に給料日を設定している大学では、最初の給料日が10月1日となります。それまでの間に、新居の家賃1-2ヶ月分、敷金(Deposit)や礼金、家具や生活用品の購入、移動手段の購入費、大学の諸料金や保険料と出費がかさみます。したがって、総額で40万円程度(1ヶ月半の生活費25万+諸経費10万+大学の諸料金5万程度)の出費を予定しておく必要があります。
現在は日本ではトラベラーズチェックの取扱いがありませんので、現金、クレジットカード、電信送金(wire transfer) が主な送金手段になります。電信送金は引出元と振込先での手数料がかかり割高ですが、最も安全です。クレジットカードは安全でレートも良い送金手段ですが、限度額に注意が必要です。VISA、MasterCard、Amerian Express などのアメリカ大手信用会社のクレジットカードを持っていると安心です。なお、100万円以上の現金や有価証券を国外に持ち出す場合には出国時に日本の税関に申告が必要です。また米国入国時も申告が必要になる可能性があります(後述)。

引っ越しの荷物を送る場合

住所がないと郵便物を送ることはできませんので、渡航前に荷造り(および税関申告書への記入)をし、日本の親類や友人に発送してもらうことになります。住所が決まったら、まずはすぐに必要なもののみをEMSで送ってもらい、本やノートなどの重量物は船便で送ってもらうとコストが抑えられます。ただし2017年現在、アメリカからは船便を発送できないので、将来日本への帰国を検討している場合は送る量に気をつけてください。日本の郵便局から発送する場合、米国側の通関手続きは、関税のかかるものが含まれていなければ特にありません。関税がかかるものがある場合は郵便局留めになり、後日関税を持参して郵便局に受け取りに行きます。運送業者による国際引っ越しサービスは通関手続きなどを業者が代行してくれるので割高ですが安心です。

2.到着編

入国

アメリカ入国の際は有効な非移民ビザ (F-1) および I-20 が必要です。これらは必ず機内持ち込み手荷物にします。ほとんどの空港では降機後、まず入国審査、次に預け入れ手荷物の受け取り、最後に税関となります。入国審査の時点で確認されますので、機内で配られる税関カードへの記入も忘れないでください。アメリカでは最初に到着した空港で入国審査と預け入れ手荷物の受け取りがあります。国内線乗継ぎの場合は再度、国内線カウンターで荷物の預け入れが必要です。乗り継ぎ時間は3時間を見積もっておけばよいでしょう。

税関

有価証券とお土産の内容に注意する必要があります。現金や有価証券の持ち込みに金額の制限はありませんが、一定金額 (10000 USD) を超える場合には税関への申告が必要です。関税がかかるわけではありませんが、申告漏れがあると入国を拒否されますので、正直に申告してください。また、野菜や果物、肉類などの生鮮食料品は持ち込めません。菓子類はほとんどが大丈夫ですが、これも税関での申告が必要です。

アメリカ空港のWifi事情

ほとんどの大空港では無料の公衆無線 LAN (Wifi)を使うことができます。一部の空港では無料 Wifi がない場合がありますが、有料のサービスはありますのでクレジットカードがあれば利用できると思って大丈夫です。

国内線乗継に失敗した場合

運悪く国内線乗継に失敗してしまった場合でも、心配する必要はありません。チェックインが済んでいれば(乗り継ぎの航空券が手元にあれば)、次の便のスタンバイリストに追加してもらうことができます。当日に便がない場合は、翌日の便になるかもしれません。事情を搭乗口のスタッフ、または再予約カウンターのスタッフに説明し、スタンバイリストに入れてもらいましょう。ただし、機材故障以外の理由で遅れた場合(天候含む)は、ホテル代は自腹になります。ホテルもタクシーも例外なくクレジットカードで支払いができます。なお、空港周辺のホテルは無料で空港までの送迎をしていますので、公衆電話でホテルに電話をかけるか、到着ロビーのコンシェルジュに頼んで送迎を依頼すると楽です。

3.生活編

銀行口座を開設する

有効な身分証とアメリカ国内の住所があれば銀行口座を開設することができます。アメリカでの基本の口座は Checking Account(当座預金口座)です。アパートの家賃の支払いなどは小切手の振り出しか口座振替ですので Checking Account が必要です。アメリカにも利息がつく Saving Account(普通預金口座)はありますが、年間の出し入れの回数に制限があります。口座の維持費がかかる場合がありますので、銀行のwebページを参考にして、どの銀行で口座を開設するか事前に検討しておくと良いでしょう。アメリカはクレジットカード社会ですので、日本のように ATM の利便性を考える必要はありません。当座預金口座を開設すればデビットカードが発行されますので、スーパーなどで買い物ついでに手数料なしで現金を引き出すことができます。

アパートを借りる

住宅事情は場所によってかなり違いますので一概には言えませんが、大学院生は大学の運営するアパートや、民間の賃貸アパートに住むケースがほとんどだと思います。大学の運営するアパートの場合は、家賃がセメスターごとの支払の場合と月ごとの支払の場合があります。民間の賃貸アパートの場合は月ごとの支払いですが、契約は1年ごとが基本になります。途中で解約できない場合がほとんどですので、住宅選びはしっかりしてください。基本的には収入の証明(I-20)と有効な身分証(パスポート)があれば契約を結ぶことができますが、場所によっては銀行口座が先に必要な場合もありますので、内覧の前に電話で聞いておくと良いです。
なお、1&1, 4&2 などの用語はベッドルームとバスルームの数を意味しています。1&1 は寝室ひとつ&バス・トイレが1つの部屋、4&2 は寝室4つ&バス・トイレが2つの部屋という意味です。ときどき 2&1.5 というふうに0.5刻みの場合がありますが、これはトイレを 0.5 と数えている場合です。したがって 2&1.5 は寝室2つ、バスルームが1つ、トイレが2つ、となります。Studio や Efficiency は寝室とリビングが別れていない、いわゆるワンルームです。

引越し後、日本から荷物を送る場合

EMSや追跡番号付き国際郵便は書留扱いになり、平日に大学に出かけていることが多い学生は郵便局で受け取ることになります。また、荷物の量が多すぎたり、一つひとつが重すぎる場合も郵便局での受け取りになります。再配達は日本と違って時間指定ができず、郵便局の窓口も9時から5時までというケースが多いですので、最初の引っ越し荷物はおそらく郵便局から運ぶことになります。日本よりも最寄りの郵便局は遠い場合がほとんどですので、研究室の先輩や友人に車を出してもらうなど、工夫して荷物を受け取ってください。なお、その後日本から小包を送ってもらう場合(お菓子など)は、「スモールパケット」で送ってもらうのがよいでしょう。書留扱いにならないので、宅配ボックスか、玄関前に置いていってくれます。なお、Amazon などで注文した品物も書留扱いではなく宅配ボックスか玄関前放置となります。

大学にチェックインする

新セメスターが始まる前に、大学の留学生課でチェックインが必要です。これは渡航予定の学生がきちんと渡航していることを確認するために必要な公式の手続きで、これをしないと在留資格が無効になってしまいます。I-20には最終期限が書いてあると思いますが、大学ごとに日付は違いますので、大学からの電子メールやwebページから情報を収集してください。また、チェックインを済まさないと履修登録ができないケースも多くあります。履修登録が遅れると1課目あたり100ドル程度の遅延料金をとられる場合がありますので、チェックインは時間通りに終わらせることをおすすめします。

自炊事情

アジア系スーパーは人口数万人規模の都市であれば品質はともかく1つくらいはあると考えて良いです。ただし、通常のスーパーでも日本米(スシ・ライス)、醤油、みりん、豆腐、のりなどは手に入る場合が多いですので、あまり日本食にこだわらなければ特にアジア系スーパーのそばに住む必要はありません。昆布、煮干し、かつお節、粉末だしや味噌などは日系スーパーで調達するか日本から送ってもらうのが良いでしょう。ご存じの方も多いかもしれませんが、食中毒のおそれがあるので、卵の生食は避けたほうが良いです。日本と似た基準で管理された養鶏場から出荷された卵の場合(米国のごく一部では入手できます)はもちろん大丈夫です。炊飯器は日本のメーカーのものを日系スーパーや amazon.com で購入することができます。もちろん、慣れれば Sauce pan で炊いてもおいしく仕上がります。


【免責事項】内容の正確さについては十分注意して執筆していますが、掲載されている内容によって生じた、いかなる損害も補償できませんので予めご了承ください。

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著者略歴

 日置 壮一郎(ひおき そういちろう)

 2013年3月 東北大学 理学部宇宙地球物理学科 卒業
 2013年9月より テキサス A&M 大学 大気科学科 博士課程在籍

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編集責任者: 日置 壮一郎
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2017年7月20日木曜日

「新留学生リレー日記」最終回 学位留学を考えているあなたに



今回のリレー日記では、UC Davisの村瀬さんにアメリカの、Oxford大学の江口さんにイギリスの、Tübingen大学の川口さんにドイツの高等教育の学位制度、学費、入学制度について16回にわたりご紹介していただきました。実際にインタビューを受けていただいたのは、3か国に留学中の方だけでしたが、カガクシャネットで独自に北アメリカ、ヨーロッパに加え、東アジア、南アジアの10カ国・地域の留学制度についてアンケートを行った結果、理系の大学院留学では、博士の学位制度、研究室又は政府による奨学金、入学時期などについてある程度共通している部分があることが分かりました。


多くの国において、日本における修士の学位、博士の学位に相当する学位がありますが、博士課程が比較的画一的である一方、修士課程については多様な制度があることが特徴的でした。博士課程(修士号相当取得後)の期間は、個人の能力や研究室の事情によってある程度変動しますが、世界的にみて3-4年程度が目安です。その反面、修士課程は国によって制度が大きく異なり、アメリカやイギリス、香港には日本より短期間のうちに修士の学位が取得できるコースが存在します。講義のみ・学位論文なしで早ければ1年ほどで修了できますので、将来的に企業就職を考えている方には向いているかもしれません。ただし、博士課程への進学を考えている場合やアカデミアへの就職を希望する場合、こうした短期コースでの学位は学位論文を有する学位と同等に扱われない可能性があるので、注意が必要です。

学費に関しては、アメリカ・イギリスでは非常に高額に設定されている一方、ヨーロッパ大陸側では、ほぼ不要の国も多く見られます。とはいえ、理系の博士課程の場合、多くの国で奨学金や研究室からの給料という形で学費や生活費の全面的な支援を受けられる制度があるので、こうした制度を活用すれば、自己負担は国に依らず、ほぼ不要なようです。また、生活費に関しても、海外では一般的なフラットシェアなどの工夫次第で大きく下げることができます。その一方、保険や医療費、年金等や授業料以外の学校の諸経費等が予想外に高額な場合がありますので、留意する必要があります。

留学の際のハードルの一つとして、日本と欧米では入学時期が異なるということが挙げられますが、イギリス・ドイツ等のヨーロッパの国々の博士課程に関しては、明確な入学時期が決まっていないため、ポジションが見つかれば、日本の修士課程修了直後からの留学の可能性も考えられます。欧米圏のみならず多くの大学で、エッセーやstatement of purpose, GPA が合否を決める重要な資料になるので、学部時代から意識して勉強し、専門分野に関する知識を身につけ、英語で考えを伝える能力を身につけておくことが大切です。また、GRE は、主に北米の大学院に入学する際に必要ですが、ヨーロッパやその他の地域でも、入学に際して、GRE相当の試験を受ける、またはGREの結果を参考資料として提出できる場合がありますので、受けておくにこしたことはないといえます。

これら世界の学位制度に関して、日本学生支援機構(JASSO)のページや、欧州委員会のページに体系的な情報が記載されていますので、参考にしてください。

繰り返しになりますが、大学院留学に関しては、同じ国であったとしても大学や学科、さらには研究室の運営方針によって、制度や待遇が大きく異なるのが実情です。そのため、一般的な情報を鵜吞みにせずに、自分自身で出願先の大学や教授と直接連絡し、気になる項目をひとつずつ確認することをお勧めします。こうした情報収集活動は日本国内で進学する場合に比べてとても大変ですが、自立して計画を立てて遂行していく、という重要な能力を身につけるチャンスです。この能力は留学中のみならず、留学後にもとても役に立ちます。

学位留学をすると典型的な日本人のキャリアからは離れてしまいますが、世界の異なった価値観をもつ多くの人との交流やネットワークの拡大を通して、視野が広がり、今後の人生がより豊かなものになります。留学を将来考えておられる方、まさにこれからしようとされている方、留学への道は、初めは勇気のいる一歩かもしれませんが、小さくも力強いあなたの一歩を期待しています。

最後に、大変お忙しい中、新留学生リレー日記の連載にご協力いただいた村瀬さん、江口さん、川口さんにこの場を借りてお礼を申し上げます。

参考リンク

最終回 おわり

新留学生リレー日記
第1回Oxford & UC Davis & Tübingen
第2回英米独の学位制度
第3回アメリカの大学院
第4回ドイツの大学院
第5回イギリスの大学院
第6回Q&A
第7回留学生の懐事情
第8回オックスフォード生活とお金
第9回ドイツ留学で気になるArbeitsvertragとStipend
第10回アメリカ留学のお財布事情
第11回Q&A(ファイナンス面)
第12回応募と入学について
第13回オックスフォード大学への出願
第14回ドイツ大学院へ出願:高校は出てますか?
第15回米国大学院への出願
第16回Q&A(出願面)
第17回 まとめ 

リレー日記の執筆者への質問やリクエストを随時募集しています。
▼▼質問やリクエストは下のリンクから▼▼

執筆者プロフィール

江口 晃浩(えぐち あきひろ)
高専時代にAFSを通じてオレゴン州の高校で一年間の交換留学を経験。2008年より米国アーカンソー大学に進学し、2011年春に理学士(コンピュータ・ サイエンス)、2012年に教養学士(心理学)を取得。同年、英国オックスフォード大学大学院に進学し、計算神経科学の博士号過程に在籍中。ブログ「オックスフォードな日々http://hogsford.com
村瀬 彩華 (むらせ あやか)
カリフォルニア大学デービス校 食品科学科の修士1年生 学部卒業後に渡米
専攻は食品微生物学
川口 雄久(かわぐち かつひさ)
チュービンゲン大学 マックスプランク神経行動科学大学院のD2
学部卒業後に渡独 研究内容は視覚情報処理と意思決定
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2017年7月9日日曜日

「新留学生リレー日記」第16回 Q&A(出願面)

「新留学生リレー日記」第16回は入学に関する話題をお届けします。


1. 大学院への応募はオンラインでできますか?

オックスフォード大学の場合、修士・博士の出願は、オンラインでフォームに記入して送信するだけなので、簡単です。Application fee はクレジットカードで決済できます。
基本的にはオンラインでファイルをアップロードすればよいのですが、成績証明書は出願前に郵送しなければいけない大学もあります。その場合は EMS で書類を大学宛てに送ることになります。UC Davis では出願前での提出書類はありませんでした。
現在はオンラインでできるようになりましたが、私の応募した当時は全て郵送だったので締め切りまでに届くかとても心配でした。大学によっては、メールで郵送した資料のコピーを送るように依頼される場合もあるようです。

2. 出願時に希望の研究室を決めなければいけないのですか?

修士に出願する場合はあまり気にしなくて良いですが、博士に出願する時は応募先の教授と事前に研究内容をすり合わせて Research proposal を作るのが重要です。私も教授から書き直しを頼まれて書き直してはじめて、面接によばれました。応募する前に希望の研究室が学生を募集しているか調べるとよいでしょう。
私は State of purpose に希望の研究室を書きました。それに付け加えて、出願時に希望研究室のランキングのリストを提出しました。これは大学独自の応募書類でした。
ドイツの博士課程に応募する場合は、ポストがあるところに応募するのが基本なので、研究室宛に応募することになります。したがって、出願時にはある程度どこで研究するかが決まっていると言えます。

3. ドイツの大学院へ応募するときに特別気をつけることはありますか?

やることがたくさんあり、何から手を付けるか決めるのが大変です。ドイツに留学する場合は奨学金の種類があまりないので、ドイツ政府奨学金に応募するのが重要です。これは締め切りが早く、例年8月末から9月上旬までに大学への応募書類と同じようなものを準備して出す必要があります。ところが実際の大学への応募書類は、10月から冬学期が始まる都合で締め切りがだいたい3月頃です。日本の卒業が3月ですから、卒業時点で進路が決まっていない、不安定な状態になってしまいます。合格発表が遅くなるので、日本の大学と併願する場合は入学金等を支払うかどうか悩みます。

第17回(最終回)へ続く

新留学生リレー日記
第1回 Oxford & UC Davis & Tübingen
第2回 英米独の学位制度
第3回 アメリカの大学院
第4回 ドイツの大学院
第5回 イギリスの大学院
第6回 Q&A
第7回 留学生の懐事情
第8回 オックスフォード生活とお金
第9回 ドイツ留学で気になるArbeitsvertragとStipend
第10回 アメリカ留学のお財布事情
第11回 Q&A(ファイナンス面)
第12回 応募と入学について
第13回 オックスフォード大学への出願
第14回 ドイツ大学院へ出願:高校は出てますか?
第15回 米国大学院への出願
第16回 Q&A(出願面)

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執筆者プロフィール

江口 晃浩(えぐち あきひろ)
高 専時代にAFSを通じてオレゴン州の高校で一年間の交換留学を経験。2008年より米国アーカンソー大学に進学し、2011年春に理学士(コンピュータ・ サイエンス)、2012年に教養学士(心理学)を取得。同年、英国オックスフォード大学大学院に進学し、計算神経科学の博士号過程に在籍中。ブログ「オックスフォードな日々http://hogsford.com
村瀬 彩華 (むらせ あやか)
カリフォルニア大学デービス校 食品科学科の修士1年生 学部卒業後に渡米
専攻は食品微生物学
川口 雄久(かわぐち かつひさ)
チュービンゲン大学 マックスプランク神経行動科学大学院のD2
学部卒業後に渡独 研究内容は視覚情報処理と意思決定
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2017年7月2日日曜日

「新留学生リレー日記」第15回 米国大学院への出願

「新留学生リレー日記」第15回は UC Davis に留学中の村瀬さんにアメリカの大学院への出願について詳しくご紹介いただきます!



UC Davisのウェルカムセンター

アメリカの大学の多くは2学期または4学期制で、9月入学が一般的です。UC Davisの場合、4学期制とはいうものの夏学期の授業は選択制のため、多くの学生はそれを除いた3学期のみ授業を受けます。一部の学部では、夏学期から入学も可能です。

出願時期は、多くの大学が9月頃から受付開始、12月上旬〜1月中旬を締め切りとしています。中には期限を設けず、年中出願を受け付けている大学もあり、その場合は先着順で審査が行われます。応募は全てオンラインで行い、受験料もクレジットカードで支払い可能なのでとても便利です。

語学資格試験はTOEFLまたはIELTSのスコアが求められ、それぞれボーダーが設けられています。TOEFLの場合、セクションごとに最低スコアを設定していることもあり、スピーキングのスコアは入学後TAをする場合に関係してきます。これらのスコアは出願の期限までに大学に送付するのが基本ですが、私は締め切り後に発表されたスコアが最も高く、追加で提出可能かダメ元で大学に問い合わせしました。どの大学も快く受け付けてくれたので、締め切り後でも柔軟に対応してくれるようです。

その他の出願書類としては、GREのスコア、CVまたはレジュメ、推薦状3通、成績証明書、エッセイが必要です。推薦状は、大学から執筆者宛にURL付きのメールが送られ、オンライン上でファイルをアップロードします。また成績証明書は、出願の期限までに原本を郵送するか、スキャンしたものをオンラインでアップロードする形式です。エッセイは、大学によっては志望理由の他にテーマが課されることがあります。例えば University of California では Personal History というテーマが与えられました。

アメリカの大学院では、研究室に応募する場合と学科に応募する場合があります。研究室に応募する場合、事前に教授とコンタクトを取ることが望ましいです。ただ、大学によっては出願後にコンタクトを取るようにと指示していることもあります。私の学科ではラボローテーション後に所属先を決定するため、事前のコンタクトは不要でした。

Admission Committee の教授の話によると、出願書類の中で特に推薦状とエッセイが重要だそうです。推薦状では research skill について評価していること、エッセイでは入学後に何をやりたいのか、また卒業後の進路にそれがどう関係するのか書かれていることが大切だとコメントしていました。出願する専攻や入学後の研究の有無によって記入内容や重点を置く点が異なるとは思いますが、少しでも参考になれば幸いです。



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第14回 ドイツ大学院へ出願:高校は出てますか?
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江口 晃浩(えぐち あきひろ)
高 専時代にAFSを通じてオレゴン州の高校で一年間の交換留学を経験。2008年より米国アーカンソー大学に進学し、2011年春に理学士(コンピュータ・ サイエンス)、2012年に教養学士(心理学)を取得。同年、英国オックスフォード大学大学院に進学し、計算神経科学の博士号過程に在籍中。ブログ「オックスフォードな日々http://hogsford.com
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2017年6月26日月曜日

「新留学生リレー日記」第14回 ドイツ大学院へ出願:高校は出てますか?

留学生リレー日記の第14回は、ドイツ大学院へ出願のスケジュールや必要書類について川口さんに執筆していただきました。大学の成績証明だけでなく、高校の卒業証明が必要になるなんて、驚きです!

情報学科の建物(元精神病院)

ドイツの多くの大学は春・冬の2セメスター制で、コースワークのプログラムに入学する場合、冬学期から入学するのが基本です。冬学期は10月から始まりますが、コースによっては9月に予備授業を行うところもあります。私が所属していた神経科学の修士課程では、10月のセメスターが始まる前に神経解剖学と Matlab を使ったプログラミングの授業がありました。

博士課程の場合、ポジションがあってそこに応募する、という就職活動に近い形になるので、セメスターに合わせても合わせなくても大丈夫です。ドイツの大学では、博士課程に所属するのに学生の身分を求められないことも多いためです。私自身も学生証は持っておらず、いずれ卒業するときは所属している研究所と提携している地元の大学から、博士号を授与されることになります。

応募に必要な書類も、大学やコースによって異なります。大雑把には、エッセイ、CV、推薦状x2、学部の成績、英語の試験結果が必要です。アメリカとの大きな違いは、GREがないことです。また、英語試験の足切りも低いので、こう言っては何ですが、入りやすいと思います。ただし、GRE Subject Test レベルに相当する筆記、もしくは口頭試験がある場合も多く、日本の学部での勉強が一番の留学への近道ではないかなと思います。

ドイツの大学生・大学院生になるには、ドイツのギムナジウム(卒業すると大学受験資格が得られる高等教育機関)の卒業資格 "Abitur" に相当する学力があることを示す必要があります。日本人の場合、高校(!)の卒業証明書(英語)が必要であることが多いです。私は更に、センター試験の結果が必要でしたが、もちろんセンターの成績は関係なく、「センターを受験できるレベルの学力がある=高校は出ている」という証明として必要でした。今でこそドイツの大学は学生で溢れてますが、ヨーロッパでは多いように、大学は高度な教育を受けた限られた人しか行けない場であった名残なのかもしれません。

もしドイツでPhDをやりたいという方がいらっしゃいましたら、以下に公募がまとまっています。
https://www.daad.de/deutschland/promotion/phd/en/



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第13回 英国オックスフォード大学大学院への出願
第13回 ドイツ大学院へ出願:高校は出てますか?

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2017年6月18日日曜日

「新留学生リレー日記」第13回 英国オックスフォード大学大学院への出願

リレー日記第13回は英国オックスフォード大学大学院への出願についてです。出願期限がない、なんてこともあるそうですので、ぜひ挑戦してみては?

オックスフォード大学の入学式

こんにちは。英オックスフォード大学の博士課程に在籍しております江口です。今回は大学院課程出願に関して簡単に紹介したいと思います。

イギリスの大学は基本的には三学期制で、一般的には秋に始まるタームが入学の時期となります。例えばオックスフォード大学のタームは、10月から始まる Michaelmas、翌年の1月からのHilary、4月からの Trinity とオックスフォード独自の名前がついているのですが、入学のタイミングは最初の Michaelmas となります。

大学院課程の出願はほとんどの場合大学のウェブサイト上から行うことができます。しかし出願ページの公開時期は学校や学科によっても異なるため、個別に確認する必要があります。出願期限が特に定められていない場合もありますが、その場合は選考は先着順になると考えてよく、できることであれば早めに出願することをお勧めします。


必要な語学資格試験については、イギリスではIELTSが最も一般的な試験です。最低基準点はプログラムによって異なりますが、6.0~7.5程度です。私の在籍するプログラム(医科学部・実験心理学 博士課程)の場合だと、最低基準点は7点、セクションごとの最低点は6.5点とのことでした。しかし一方で、英語圏や授業の大半が英語で行われる学部教育を受けた受験生の場合であれば、試験の免除を申請することも可能です。

GRE等の特別な試験は課せられない場合が多く、選考は基本的には、学部成績(GPA)、研究実績、推薦状、面接、提出小論文に基づいて行われます。また、出願の段階であらかじめ奨学金を確保していたりすると選考が優位に進む例も多くあるようです。提出小論文はプログラムの要件によって違いますが、Taught Master の場合は志望動機 (SoP) や与えられたテーマの小論文(academic written work を参照)、Research Master や PhD だと研究提案書が必要となる例が大半のようです。研究提案書を書く際には、あらかじめ受け入れ先の研究室の教授と連絡を取り合い、研究の目的等共通の理解を深めておくと役に立つと思います。

海外の大学院進学は色々と手探りのことばかりで不安も多いことと思いますが、出願自体は案外シンプルな場合がほとんどですので、是非挑戦してみてください。




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2017年6月11日日曜日

「新留学生リレー日記」第12回 応募と入学について

アメリカ、イギリス、ドイツでの修士課程/博士課程の応募についての情報を執筆者の皆さんに伺いました。

1.入学時期(セメスター開始)は年に何回?

オックスフォード大学は8週間の3学期制で、9月入学です。セメスターが他の大学より短めですが、学生は活発に課外活動に取り組んでいます。
 UC Davis は10週間ずつのクオーター制(4学期制)ですが、夏クオーターは選択制のため、実質3学期制です。所属する学科は9月下旬入学のみでした。夏クオーターから入学可能な大学・学科もあります。
ドイツでは夏学期と冬学期の2学期制で、10月中旬(冬学期)入学が中心です。日本から入学する場合、数か月前に事前に渡独しておき、語学研修をするという手もあります

2.では、修了時期はどうですか?

修了はいつでも可能ですが、年数回の卒業セレモニーに出る場合は、建物が小さいため、1年前ぐらい前から事前に申請して予約しておかなければいけません。
 一般的に修了する学生が多いのは春学期の終了後ですが、毎学期毎にコメンスメント(修了式)は開かれています(春以外は、学部生が多いです)
ドイツの場合には学位記授与式やコメンスメントがありません。修了要件を満たした時点でdefenseをして博士課程/修士課程修了となります。

3.修士/博士課程への応募に必要なテストスコアについて教えてください

英語のテストスコアはIELTSが必要です。専攻によって要件が変わりますが、一般的には6点から7.5点が必要です。またほとんどの専攻でGREのような試験はなく、成績や出版リスト、研究計画などで合否が決まります。
 英語のスコアは UC Davis 全体の基準として、TOEFL iBTで最低80点、または IELTS 7点が必要です。大学によって基準は変わりますが、おおむね80点から95点くらいです。大学によってはセクションごとの最低点がある場合があります。 GRE のテストスコアの提出が必要ですが、直近5年のものでよく、特に最低点は決められていません。
英語のスコアは大学、専攻によって異なりますが、 TOEFL iBT 80点または IELTS 6.5点が必要です。ドイツ語に関しては理系の場合は、不要な場合が多いですが、文系の場合は、欧州統一基準で B2 または C1 程度が必要です。B1 や C1 は日常生活で問題がなく、授業が聞ける程度に相当します。追加の試験は博士課程の場合はありませんが、修士課程の場合はプログラムごとに GRE Subject 相当の入試がある場合があります。

4.そのほか、応募に必要なもので特に気をつけることはありますか?

テストスコアの他に、成績証明書、推薦状2通(または3通)、CV、奨学金の受給資格書(あれば)が必要です。修士課程に入学する場合はこれに加えて、 writing sample とよばれるエッセイか Research proposal が必要です。Research proposal は博士課程の入学でも必要ですが、留学先の先生との事前の打ち合わせが必要です。
 一般的には、成績証明書、推薦状3通、レジュメ (CV)、statement of purpose が必要です。UC の場合はさらに Essay (future goal/personal history/research interest) それぞれ 4000文字以内(Research interest は 2000文字以内)が必要でした。
成績証明書、推薦状2通、statement of purposeと、ギナジウム卒業程度の学力証明が必要です。博士課程の場合は推薦状の執筆者が決まっている場合(修士と応募先の指導教員からそれぞれ1 通、など)があります。特に博士は、ポジションがあってそこに応募する形が一般的なので、応募先の指導教員と事前に相談をするのが必須です。また、ドイツ のギナジウム(中高一貫校)卒業の学力を証明することが必要なので、私は高校の卒業証明と、センター試験の結果を提出しました。

第13回へ続く

新留学生リレー日記
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2017年6月5日月曜日

「新留学生リレー日記」第11回 ファイナンス面 Q&A



1.税金の確定申告は留学先でしなければいけないのですか?任意の場合はしていますか?

イギリスでは、おそらく任意ですが、オンラインで申請できるので、やってみたことがあります。英語なので難易度が低いです。
アメリカでは強制です。毎年4月上旬が期限です。留学生は税務署に書類を郵送しなければいけないので、大学が書類づくりを支援するソフトウェアを提供してくれる場合があります。
ドイツでは、任意です。申告すれば税金が戻ってきますが、手続きが非常に煩雑なうえ、ドイツ語で困難なので、外国人の場合していない人が多いです。

2.住居はどのように選べばよいでしょうか?

オックスフォード大学の場合、学部生は優先的にカリッジに住めますが、大学院生は抽選で初めの1~2年だけ住めるというケースが多いです。8月の終わりに人づてにもらった空き情報を狙って申請を出すと、うまく部屋がもらえたりするかもしれません。また、住む地区を選ぶにあたって、「この地域は危ない」などという地区はあるので、注意が必要です。
アメリカでは、学部生は大学が所有する寮か、市内でルームシェアが基本ですが、大学院生はワンルームの場合が少なくありません。結婚している人もいるので、そういう人たちは夫婦・家族でファミリー向けのアパートに住んでいることもあります。ただし、遠くに住む場合や、街に交通機関がない場合、自動車が必要になるケースが多々あります。(目安として、保険:200 $/月、ランニングコスト:300-400 $/月)
ドイツでは、大学内に大学所有の学生寮があります。かつては全員住むことができたのですが、現在は学生が増えたせいで、隣の町や遠くの田舎に住むことも多いです。学部生でも1時間離れたところから車で通っている人もいます。また、ドイツには、歴史的景観を重視する法律があって、新しく建物を建てるのが大変困難なので、学生寮を新たに建てることはほぼありませんし、600年という長い歴史があるので、アメリカのように、郊外にキャンパスを移転することもありません。慢性的な住居不足となっていますので、ドイツに住む場合は、早めの部屋探しをお勧めします。

3.個人的な旅行はどのくらいしていますか?

最近するようになりました。ヨーロッパ内だとLCCで片道50ポンドくらいなので、ロンドンに出るバス代の方が高いことすらあります(笑)イギリスでは電車がよく遅れたり、キャンセルになったりします。最終列車でオックスフォードに帰ろうと思っていたら、「運転手が見つからないためキャンセル」ということがありました。
一度ロサンゼルスに旅行(飛行機で1時間半)したことがあります。クリスマスシーズンだったので、往復 200 ドルくらいしました。旅行は基本的に飛行機です。列車(Amtrak)はありますがかなり時間がかかってしまいます。(サンフランシスコからシアトルまで14時間!)学科からの奨学金で、日本への一時帰国は年に1度位は可能です。
最近あまりしていないです。規制緩和の流れで国鉄以外の乗り物が便利になり、最近ドイツ国内で民間のバス会社が力をつけてきています。昔はドイツ国内で、電車を使わないと行けなかった場所でもほとんどバスで行けるようになりました。

4.ドイツでは、博士課程は学生でなくてもいいの?学生でない場合のビザの問題は?

学籍登録を抜いた場合、私のように、博士課程の学生は労働ビザにすることができます。ただし、研究所から「奨学金」という形でもらう場合は、学籍登録と学生ビザが必要です。(ドイツではビザはEU圏に入国後に取得できるので、事前申請は不要です。)

5.オックスフォードのカリッジ・フィーは住居費と別ですか?

はい。別です。カリッジの寮に住んでいなくても、カリッジには必ず所属するので、カリッジ・フィーは払わなければいけません。カリッジに所属することで、例えば為替レートの急速な変動で手元のお金がなくなった場合など、経済支援(返済不要)をしてくれることがあります。

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