2016年12月30日金曜日

連載「アメリカ修士留学記(航空宇宙工学)」第2回:アメリカから日本への就職活動

連載「アメリカ修士留学記(航空宇宙工学)」の第2回です。
今回は関さんにアメリカから日本への就職活動について寄稿していただきました。
就活戦術や会社についての情報が少ないなかで、ボストンキャリアフォーラムを
活用して最終面接につなげた体験を紹介していただきます!



第1回から)

私が就職活動を開始したのは10月下旬です。ボストンキャリアフォーラム前に某自動車会社がアメリカで選考会をするということで慌てて準備を開始したのが始まりです。この選考会があると知ったのはその会社のweb上でエントリーしていたおかげです。初めてエントリーシートというものを書こうとしたのですが、どうやって書けばいいか全く見当がつきませんでした・・・。そこで、自分の壮大な夢(宇宙に行きたい)をその会社がやっている事業に混ぜて書くことにしました。友人に添削してもらう→直す→添削してもらうという過程を応募締め切り直前まで4回ほど繰り返してなんとか応募できました。ちなみにwebテストも受けましたが、練習もしていなかったので全然できなかったです。この時点で結構燃え尽きてしまいました(笑)。

応募したところ書類選考は通り(友人のおかげ!)最終選考に呼ばれました。そこでは工場見学→グループディスカッション→2回の面接という形で進みました。しかし、グループディスカッションで私の悪い癖が出てしまいました。私は、人が主張していると、自分の主張があっても(もちろん主張しますが)、そちらに意見を譲ってしまうという傾向があるのです。そして、意見を譲った後は子供の様にふてくされて、議論にあまり参加しない、という協調性を欠いた行動をとってしまうのです。社会で生きていくうえで重要な協調性を欠いた行動は自分でも大きなマイナスだなと思っていたのですが、変えることができませんでした。

面接は、自己紹介、志望動機、会社で何をしたいか、今まで頑張ったこと、長所短所、逆質問という一般的な流れで進みました。私は面接で自分の価値観(仕事とはこうあるべき、とか、人間とはこうあるべきとか)を語りまくったのですが、これは一番やってはいけないことだと、後々友人から教わりました。会社が求めているのは、会社でどういうことをしたくて、そしてどのようにして自分の特技、専門分野を活かせるのか明確にしている人です。当時の私は、自分の言いたいことは言った、と満足し受かると思っていました(なんと愚かな)。結果としては、今から思えば案の定、当時としては「なんで!?」と思ったのですが、落ちてしまいました。しかし、今思えばここで落ちたことで調子に乗らず、反省できたので良かったです。

なぜこの自動車会社の選考会で落ちたのかを分析し、グループディスカッションで議論に参加していなかったこと、志望動機がぶっ飛びすぎていたこと、企業のリサーチ不足、自己分析不足が原因だと判断しました。私は特に自己分析に苦労しました。正直、自分がやりたいことが分からなかったのです。自分がやりたいこと、やらなければなないこととして、未だに「これだ!」と感じるものがなかったのです。宇宙に行きたいという夢はありますが、それは好奇心からきていることで、やらなければならない事ではない気がします。当時の私はこんなふうに堂々巡り悩んでいました。そこで、数週間後に迫ったボストンキャリアフォーラムに向けて、自分の専門分野と会社の事業を結び付けて志望動機に落とし込みました。正直、私自身としては納得いかなかったのですが、会社の情報も少ないですし時間もなかったので妥協するしかありませんでした。今やるとしたら、3年後、10年後どんな自分になりたいのかイメージして、その会社でどういうことをしていればそんなふうになれるのか考えて志望動機にすると思います。

いよいよボストンキャリアフォーラムです。私は重工系の企業を1社(以下A社とします)、重電系の企業を1社(以下B社とします)の計2社受けました。ボストンキャリアフォーラムは3日間ありますが、面接があるのはだいたい1、2日目です。ボストンキャリアフォーラムでは当日にいきなり面接することが可能な企業もありますが、普通は事前に応募して、書類選考が通れば面接まで行けます。企業によっては、応募書類を10月下旬までに出さなければならないところもあるので注意が必要です。私は、ボストンキャリアフォーラム前に書いていたエントリーシートを手直しして使いました。それでも、4、5回友人に添削してもらったので、1社に1週間は時間をかけた気がします。書類選考は2社とも通過しましたが、問題は面接でした。1日目の面接はA社で本命でした。面接では、志望動機は聞かれず私のことを教えてくれという形でした。私は質問に淡々と答えてしまい、こんなんでいいのだろうかという感じで終わりました。2日目はB社で面接官が上手く質問してくれたおかげで、予想以上にスムーズに進み、その場で2次選考(最終面接)に進んで下さいと言われました。こんな感じで私のボストンキャリアフォーラムは終わりました。

(第3回に続く)


著者略歴

 関 大悟 (せきだいご)
 2014年 8月 上智大学理工学部 材料力学研究室 卒業
 2015年12月 アラバマ大学大学院航空宇宙工学科 修士
 2016年 4月 重電系大手に就職(日本国内)

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発行責任者: 武田 祐史
編集責任者: 日置 壮一郎
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2016年11月28日月曜日

連載「アメリカ修士留学記(航空宇宙工学)」第1回:やろうと思えばできる


今月から3ヶ月連続で、アメリカ修士留学記をお送りします。アラバマ大学航空宇宙工学科を2016年に卒業された関さんに、2年間の留学生活と就職活動を振り返っていただきました。山あり谷ありの留学生活の生の声をお届けします!



大学院留学しようと思ったきっかけ

私が大学院留学しようと思ったきっかけは、したほうが良いと直感したといえばそれで終わりになってしまいますが、振り返れば恐らく大学1年生の夏に行ったアメリカへの短期留学ではないかと思います。その時は、文化の違いに驚いたぐらいでしたが、歳を重ねるにつれて留学が自分の人生の肥しになるはずだと感じてきたのです。

私は今まで何か一つでも人類に貢献できる人になりたいと思っていました。そういう人になるには、やはり世界を知らなければならない、と思っていました。また、他の人と違うことがしたいということもあり、留学ということが浮かんできました。親から「若いうちに苦労はいっぱいしとけ」と言われたことや、私の尊敬する指導教官やノーベル賞受賞者等、世の中に貢献している多くの人は、留学していることも後押ししました。アメリカには世界中から人が集まり、大学院は教育の本場だといわれています。そんな所で、自分の力が通じるのか見てきてやろうじゃないか、と決意したのです。

留学準備

私は大学院留学の準備を大学2年生の後半にスタートさせました。大学院留学にはTOEFL、GRE、志望理由書(エッセイ)、推薦状3通が一般的には必要です。この辺のことは、先輩方が多くの記事を書いていると思うので割愛します。言っておきたいことは、私ができたのだから皆できるということです。私は高校生の時から英語は苦手でした。そういう劣等感があったので、大学でも力を入れて勉強しましたが、大学2年生の時に頑張って勉強してTOEIC600点というレベルでした。それでも何とかなったので、つまずいている方は励みにしてもらえると幸いです。

留学中

私はアラバマ大学大学院の航空宇宙工学科の修士課程に進学しました。ここに決めた理由は、博士の日本人の先輩がおり、卒業生の方と交流があったためです。アラバマ大学では、日本の90分週1回の授業とは対照的に、週に2、3回同じ授業があります。授業時間は日本よりやや短く、週2回の場合は70分で週3回の場合は50分です。授業期間は、春は1月から5月、秋は8月から12月のそれぞれ約4か月間です。テストは基本的に中間2回と期末1回の3回あり、その他にも宿題とプロジェクトというものがあります。 プロジェクトというのは普通の宿題よりも時間をかけて行う宿題のことです。

例えば偏微分のクラスでは合計4つプロジェクトがありました。プロジェクトの期間はだいたい2、3週間で、私の専攻ではプログラミングは基本なので何かしらのプログラム言語を理解している前提で課題が出ました。だいたいの人はMatlabでした。私は大学2年生の時に少しC言語を授業で習っただけなので、プログラミングなんて本当にちんぷんかんぷんでした。しかし、プロジェクトを1週間で仕上げなければならなかったので日本人の先輩の手を借りながら、一から理解していきました。

これは本当に大変でした。しかし、人間というものは追い込まれると力を発揮するものでなんとかできましたし、この1週間がこの後のプロジェクトや研究に役立ちました。また、プログラミングというものに抵抗がなくなった気がします。アメリカに行く際には何かプログラミングができると後々楽になると思います。

研究に関しては、ほとんど何も知らない状態からのスタートでした。私はポスドクの人がやっていた研究を引き継いだのですが、その人がすぐに学校をやめて違う州の会社に就職してしまったうえ、教授もそのテーマについて専門ではなく、他の研究メンバーも全く違うことをやっていました。そもそも、私の大学では私の与えられたテーマを研究している人がおらず、それが大変でした。

しかも、研究報告は週1回で10-20分でした。日本では、分からなければ先輩に聞けますし、教授も研究報告のために週1回1時間半を取ってくれていたので、この違いにびっくりしました。もう、これは自分一人でやって教授に教えるぐらいの気持ちでやるしかないと決心しました。結局研究は無事終わりましたが、学会で発表できたというわけでもなくモヤモヤして終わりました。そういう意味では、日本で研究していたほうが良い結果を残せたかもしれません。しかし、こういう教授もいるのだ、こういうやり方もあるのだと知ることができたことは大きな財産です。

留学後の進路

一番皆さんが気にされているのは留学後の進路だと思います。私の場合、正直なところ博士に行くほど勉強が出来るとは思いませんでしたし、研究の世界で一番になれはしないと思っていました。でも、研究の世界にも興味はありました。企業で働いて大学に戻ってきたという人もいますし、やはり1回働いてみたいと思い、留学後は就職するつもりでした。

就職するとしてもアメリカか日本かという選択があります。航空宇宙系の会社で働くならば、アメリカではグリーンカード(市民権)が必要です。これをとるのはなかなか難しいらしいです。グリーンカードが必要ない他の職種ならなんとかなるかもしれませんが、私はもともとアメリカで働く気はありませんでした。周りからは、給料も良いし何で就職しないのと言われましたが(笑)

留学生の中では珍しいかもしれませんが、私は日本で就職する気でした。留学中に日本がやっぱり好きなのだなと気付きましたし、この日本を良い方向に変えていきたいという思いを持っていたからです。坂本龍馬風に言うと「日本を今一度洗濯し候」です。ですから、もともと日本の企業に就職して日本に貢献しようという気でした(アメリカの企業に行きたい人、ごめんなさい)。

では、どうやって就職活動したかといいますと、皆さんご存知のボストンキャリアフォーラムを活用しました。ボストンキャリアフォーラムは毎年11月後半に行われます。私の場合は、研究の発表やテスト勉強期間中とかぶっていたのですが、合間を縫って就職活動をしました。人間やろうと思えば何でもできるものです。

具体的な私の就職活動については、第2回でお話ししたいと思います。


○ 関さんにご質問がありましたら、カガクシャ・ネット宛にお気軽にご連絡ください。

著者略歴:

 関 大悟 (せきだいご)
 2014年 8月 上智大学理工学部 材料力学研究室 卒業
 2015年12月 アラバマ大学大学院航空宇宙工学科 修士
 2016年 4月 重電系大手に就職(日本国内)

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2016年10月24日月曜日

学位留学FAQ

今月のメルマガでは、学位留学についてよく寄せられる質問を Q&A 形式で紹介します。LinkedIn での過去のディスカッションをまとめていますので、複数の回答があった質問では、すべての回答を紹介しています。学位留学の出願に向けて、どうぞご参考に!

質問1
理工系の海外の大学院では学費が無料で、なおかつ生活費(給料)が出るというのは本当ですか?
 回答
絶対ではありませんが、博士課程では出る場合が多いです。また、大学院自体は合格であっても、全額自費という場合も当然あります。

質問2
海外の大学院の博士課程プログラムでは奨学金・給与は具体的にどの程度頂けますか?また、その奨学金・給与で、十分な生活ができますか?
 回答
金額は場所によってまちまちですが、一人暮らしをする分には十分なくらい貰えます。ただ、すでにご結婚されている場合、夫婦二人分の生活費をResearch Assistant (RA) だけで賄うのは少し厳しいです(不可能ではないです)。

質問3
日本で奨学金を取った方が有利ですか?またどこの奨学金に応募すればいいですか?
 回答1
投資という面で考えれば、奨学金の申請には、長くても数日で完成する書類を提出し、面接を受けるだけで、数百万円から数千万円のリターンを得られる機会で す。仮に奨学金が不採用になっても、数時間の書類作成期間と書類郵送費以外には何の影響もありません。よってノーリスク・ハイリターンの絶好の機会である と考えられるので、該当するものはすべて応募するくらいの感覚でも良いと思います。
 回答2
既に回答は出ておりますが、上記に加え、奨学金を外部からもらうことができれば、大学院側の資金面での負担が減る分、受け入れの可能性が上がるかと思います。また、「奨学金を貰える=優秀」というアピールも可能ではないでしょうか。
 回答3
奨学金の応募に関しましては、JASSO の海外留学奨学金パンフレットが良くまとまっており、大変便利です。http://ryugaku.jasso.go.jp/publication/pamphlet/

質問4
海外の大学院の博士課程プログラムに応募する際には何が必要ですか?
 回答
多くの場合出願に必要なものは、成績証明書、TOEFL (または IELTS)、GRE の受験 (米国の場合)、CV (または Resume)、推薦状 (2〜3通)、Statement of Purpose (出願理由を書いたエッセイでとても重要)ですが、大学や学科によっても応募書類が異なる場合があるので、事前の調査が大切です。プログラムによっては、 Skype での面接を要求される場合があります。

質問5
海外の大学院の博士課程プログラムには入学希望時期からどのくらい前までに応募しますか?
 回答
米国の場合は大学院の多くは9月入学で、入学願書の締め切りは前年12月から1月です。欧州では随時願書を受け付けている場合もあります。

質問6
留学準備にはどの程度の時間がかかりましたか?
 回答
留学相談会などで、どれくらいの準備期間を取ったかをスタッフに聞くと、決断してから出願まで2年くらいという答えが返ってくることが多いです。米国出願の 場合は、最近ブログにも出ていましたが、夏までに TOEFL (IELTS)、GRE を終わらせておくことが理想です(が、現実的には秋の終わりにまでズルズルかかることも多々...
http://kagakushanet.blogspot.com/2016/03/blog-post_14.html
準備が間に合わなかった場合やオファーがもらえなかった場合に備えて日本の大学院に併願しておくことも悪いことではないですし、日本で D2 まで研究してから米国の大学院に移ったという例も聞いたことがあります。フレキシブルに計画を立てることをお勧めします。

質問7
英語のスコアをどうやって上げたらいいですか?
 回答1
何事にも練習なので、使う頻度を増やすというのはいかがでしょうか。
 回答2
英語力は一朝一夕に身につくものではありません。毎日の地道な練習が大切です。また、スコアを伸ばすためには大量の練習問題を解いて、問題形式に慣れるということも必要となってきます。

質問8
GPA が低いのですが...
 回答1
プログラムによっては、GPA 3.0 で足切りをしてしまう可能性があります。以前私(中尾)の指導教官が GPA 以外は良さそうな applicant が居るけど、GPA 3.0 cut は結構厳密で取るのは難しい、とぼやいていました。Minimum score を公表している所は多いと思います。
 例 (UC Riverside): What are the minimum scores accepted?
 http://www.cee.ucr.edu/graduate/gradfaq.html
他の要素が優れていればカバー出来る、というケースもあると思うので、いくつかの department に問い合わせてみて、minimum GPA より低くても考慮してもらえるのか確認してみたら良いのではないかと思います。
 回答2
米国の博士課程からオファーが出なかった場合に備えて、修士のみのコースにも出願しておくことは悪いことではないと思います。日本の大学院の博士課程と比較した場合、
  1. 英語で研究できる
  2. 米国で授業を取ることで、その単位が(PhDは別の大学に行ったとしても)米国の博士課程に移行できる場合がある
  3. RAなどの資金援助を得るのは MS program だと厳しそうで、授業料などの出費は痛い
  4. 働きぶりによっては強い推薦状を(行きたいラボと近しい先生に)書いてもらえるということが挙げられます。
質問9
推薦状は誰に頼むのが良いですか?
 回答
内容がいいものが書いてあるという前提の上では、強いのはおおよそ以下の順であると考えられます。希望の教官本人 > 希望先の学科の選考委員会の教員 >> 世界的に、特に同分野では著名な人物 > 教官本人との直接の知り合い > 指導教官 > 学科の先生など。もちろん、推薦状を書いてもらう先生に自分を知ってもらう努力が大切です。

質問10
特定の大学や先生へのコネクション等は特にないので、興味のある各教室の先生方にメールを送るべく計画を立てています。しかし先生方もお忙しいと思いますし、博士課程からのツテなし留学は、厳しいでしょうか?
 回答1
コネに関しては、以前ブログにも書きましたが、なければ作れば良いのではないでしょうか。http://kagakushanet.blogspot.com/2015/08/blog-post_29.html
 回答2
ツテについてですが、ツテがなくても、メールがきちんとしていて、面白そうな学生だと思ってもらうことさえできれば、返信がくるのではないかと思います。私 は出願の時に、返信が来ないことを恐れてなかなかメールできませんでした。今考えるともったいないことをしたと思います。波長の合う先生ならきっと返信が あるはず (と私は信じています)。波長が合う・合わない先生を見極めるいい手段と思って、まずはメールをしてみたらいかがでしょうか?
 回答3
返事がきやすいメールの書き方をまとめました。是非ご参考下さい。http://www.hajime77.com/entry/PhD/application/contacts

質問11
一流校のPhDコースへの出願において、研究実績は実質的に必須なのでしょうか。
 回答1
書類で重要なのはポテンシャルを感じさせられるかどうかだと思います。
学部生で論文を出す方はあまりいないですし、co-author の論文があっても
どうせ大学院生が書いたものでしょ、という印象です。学部生の場合、GPA、
テストスコアが満足に取れていれば、あとは小さくても学会発表をするとか、
奨学金や賞をとるとかで差がつくかと思います。やはり知っている人からの
推薦状があると一番取りたくなります。修士を持っている学生には
その分期待値も上がります。微妙な成果しかあげていない修士卒は、
優秀そうな学部生と大差ない場合もあります。学部生で Publication が
なくても可能性はありますし、修士で Publication が出せたからといって
必ずしも学部生よりも強い Candidate になるとも限らないです。
最終的には運も大きく影響するので、最低数校は応募しておいて
損はないと思います。(中尾)
 回答2
必須ではありませんが、あると選考にはプラスに働くでしょう。実績と
いっても、publish されているかどうかにかかわらず、研究室で何の実験を
してどういうスキルを得たか、何の知識があるかがアピールできれば
十分強みと言っていいかと思います。

質問12
学校、研究室はどのように探しましたか?
 回答1
一般的な情報ですが、US News の大学ランキングが参考になるかもしれません。http://grad-schools.usnews.rankingsandreviews.com/best-graduate-schools (高橋)
 回答2
私は論文・研究室HPを読みあさりましたが、今思うとあまり効率は良くなかったと思います。日本で、米国での研究事情に詳しい先生を捕まえて相談して、紹介してもらった方が素早く情報が集まると思います。(中尾)

質問13
学校、研究室を選ぶ基準はどのようなものでしたか?
 回答1
研究内容・場所・先生の数の多い学科のほうが研究内容が多様で、学べる幅も広くなります。また、興味のある研究をやっている先生が複数いた方が、コンタクトしやすいですし、入学後の研究室変更ということもできます。
 回答2
私の場合は実際に時間を作って複数の研究室を訪問しました。教授の人柄や研究室の雰囲気というのは百聞は一見に知らずです。もしその研究室が気に入れば、モチベーションアップにもなると思います。

質問14
分野変更についてですが、「そもそも入学できるのか」という疑問と「仮に受かってもコースワークについて行けないのではないか」という疑問があります。
 回答1
やる気次第ではないでしょうか?
 回答2
質問11と同様で、入学できるのかについてはポテンシャルを感じるかどうかによると思います。他分野の人材を受け入れることによって新たな研究の方向性が見えてくることを期待している場合もあります。実際に他分野出身の学生をとっている例はいくらでもあります。
 回答3
分野を変えるということ自体はプラスともマイナスとも取れます。これまで学んできたことを活かせる要素があれば、それは大きなアピールポイントになります。

質問15
海外の大学院に進学した場合、日本や滞在先での年金、保険はどうなるのでしょうか?
 回答
日本での保険・年金は、支払っていれば加入し続けることができます。海外の場合、入学と同時に保険への加入が求められます。大学院留学の場合保険料は大学持ちであることが多いですが、(アメリカの場合)歯医者が保険適用外であることが多いです。

質問16
博士課程修了でも現地の一般企業への就職は可能でしょうか。
 回答
十分可能です。Visa の問題だけでなく、就職を見越した在学中の準備が大切です。

質問17
Resume の書き方について教えてください
 回答
こちらの記事にまとめましたので、ぜひご覧ください!
http://kagakushanet.blogspot.com/2013/12/blog-post.html

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○ 次回からは3か月に渡ってアメリカ修士卒の就職活動記をお送りします。お楽しみに!

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2016年9月30日金曜日

スタンフォード留学までの道のり(生物情報科学・博士課程)

谷川洋介さんに入学までの体験記を寄稿していただきました。
進路選択の時に考えたことや大学院入試の様子などを詳しくまとめてくださいました。


Stanford Medical Center
Image by Robert Skolmen (Wikipedia user: Bobskol854)


はじめに


みなさま、はじめまして。谷川洋介と申します。日本の学部課程で「生物情報科学」という分野を専攻し、2016年の9月からStanford 大学のBiomedical Informatics 博士課程に進学することになりました。準備にあたっては、留学をされている諸先輩方や、カガクシャ・ネットの体験談に励まされ、また指導教官をはじめとする周囲の方々にご支援を頂きました。どうもありがとうございます。
このたび、学位留学をはじめるまでの体験談を執筆する機会をいただきました。拙い文章ではありますが、ご笑覧頂ければと思います。


進路選択の際に考えたこと


私は、生物情報科学という学問分野を専攻するに至りましたが、これに至るまでには紆余曲折がありました。

小中学生のころから科学が好きでした。自然界に現れる一見すると複雑な現象を、シンプルな言葉で説明することができる、そのような枠組みや、サイエンス・フィクションに現れるような、科学技術がもたらす近未来に、漠然とした憧れがありました。

高校生のころ、物理・化学・生物などの諸科学を比較したときに、生物学の学問領域には分かっていないないことが多くあることに気付きました。多種多様な生物も、DNA・遺伝子という共通の「設計図」により作られていることを知り、大きな衝撃を受けました。設計図が与えられたときに、どのように生命を形作るかは解明されていないと知り、いつか難問を解いてやろうと夢見ることもありました。

大学に入り、生物情報科学という分野に出会いました。生物情報科学は、コンピュータを用いて生命現象の解明を目指す分野です。生物学、コンピュータ科学はもちろんのこと、統計学、数学、疫学や医学とも関連のある分野横断的な学問です。新しい方法論が開発される面白さがある反面、専門に加えて関連分野を広く理解する必要があるという難しさもありますが、自分の性格にあっていると感じています。

生物情報科学を学んでいくうちに面白さに目覚め、将来は研究に携われたら、と考えるようになりました。学際的な分野を専攻するにあたり、日本とは異なる環境で刺激を受けることが将来何かの役に立つであろうと期待し、海外大学院への進学を決心しました。また、学部課程の間に、大学が募集する短期の海外体験プログラムに参加して、異なる環境で学習・研究するという選択肢があることを知ったことも、学位留学を決意する大きな後押しになりました。


米国における生命科学分野の博士課程


米国の生命科学系の博士課程は、最初の一年間が研究室ローテーションとなっている場合が多いです。これは、3ヶ所程度の研究室を約3ヶ月ずつめぐり、お互いにとってベストマッチの研究室を見つけるという仕組みです。このため、大学院入試では、研究室ではなくプログラムに応募することになります(もちろん、配属を希望する研究室のリストを提示することにはなります)。

私にとって、米国大学院のローテーションのシステムは大変魅力的に映りました。生命は、DNAという設計図をもとに、タンパク質などの「部品」を合成します。そして、これらの部品を組み合わせて細胞を、細胞を組み合わせて組織を...やがてこれらはひとつの個体を作り上げます。これらのプロセスに異常があると、生命現象が停止してしまったり、疾患になったりします。階層的な制御構造を支える基本原理を解明するためには、何らかの生命現象に着目してこの仕組みを解明することが近道です。例題として、どのような生命現象に着目するのが良いのかを絞り込むことは、研究経験が浅い私にとって、難しい問題でした。私は、米国大学院の研究室ローテーションを用いて自らの見識を深めた上で、博士論文のテーマを決めたいと考えました。自分が面白いと感じたテーマの研究室が3つ以上あり、分野融合的な教育・研究環境が整った大学という観点で、少し多めの11校に出願しました。





大学院博士課程の入学審査


大学院入試のプロセスは、書類審査と面接審査の二段階でした。化学系などでは、書類審査を中心に合否が決まり、合格者がキャンパスビジットに招待されるという話も聞きますが、生命科学系は面接を経てオファーを出すプログラムが多いようです。お互いに相性を確認した上で進学先を決定することで、入学後のミスマッチを減らすことが出来る良いシステムだと感じました。

願書、推薦状、志望動機、大学入学以降の成績、TOEFL 等語学試験やGRE という共通試験の成績を12月頃の出願締め切りに間に合うように提出し、1月から3月にかけて、インタビューのために8校を訪問しました。

インタビューは、どの大学もおおむね2~4日間の日程で行われます。事前に希望を出した3~7名程度の教授と、30分ずつ一対一の面談を行い、自分のことをアピールすることになります。いくつかのプログラムからの案内に「面接では、いろいろなことが話し合われるが、今までの研究経験を明確に説明できるように準備しておくように」と書かれていたように、研究経験を自分の言葉で説明する能力は多くの大学で求められています。

私の場合は、学部課程での卒業研究のエッセンスを、まずワンセンテンスで述べ、その後相手の質問に答えながら内容を深く掘り下げるという形で詳細を説明できるように準備しました。面接の相手には、希望する指導教官ばかりではなくアドミッション・コミッティーの先生も含まれるため、少しずつ互いの理解を確認しながら対話を重ねることで、第二言語での会話における齟齬が生じないようにすることができると感じました。また、ディスカッションの途中に、先生の部屋にあるホワイトボードに図や式を描きながら説明することで、口頭だけでは説明が難しい概念も、きちんと伝えることが出来たと手応えを感じることが多々ありました。卒業研究のテーマと近い領域で研究をされている先生からは、鋭いフィードバックをいただくこともあり、学会でポスター発表をしているかのような高揚感を感じることもありました。面接の後半では、自分の研究経験が、どのように大学院での学習・研究の基礎となっているのか、自分なりの解釈を述べました。面接の最後のほうに、キャリアデベロップメント上のアドバイスを頂くこともあり、大変有意義な時間となりました。

インタビューには、面接以外の活動も含まれます。これは、出願者の側にも大学の魅力を知ってほしいというアイデアによるものです。教授陣とディナーに出かけたり(これは、面接で会うことができなかった先生と話すチャンスです)、今の大学院生たちとディナーや周辺の観光に出かけたりといった活動が、スケジュールに組み込まれています。今の大学院生、つまり先輩、と話す機会では、なぜその大学を選んだのか、不満に思っていることはないか、希望する研究室に配属することが出来たか、将来のキャリアデザインをどのように考えているかなどなど、率直な疑問をぶつけることができました。ロール・モデルとなる大学院生を見つけることができる良い機会となりました。


最後に


多くの方々から支援をいただき、幸運なことに、海外大学院への進学というチャンスを手にすることができました。学位取得までは5~6年と長い道のりになりますが、焦らずたゆまず頑張っていきたいと思います。


This work is licensed under a Creative Commons Attribution-ShareAlike 4.0 International License. The details of the license is available from the following URL: https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0/deed.ja

著者略歴:

 谷川洋介 (Yosuke Tanigawa)

 Student
 Biomedical Informatics Ph.D. program,
 School of Medicine
 Stanford University
 https://sites.google.com/site/yktanigawa/

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2016年8月28日日曜日

EducationUSAの取り組み

今月はEducationUSAセンターの笹田様に米国留学情報をご寄稿いただきました。 学位留学の基礎情報を丁寧におさえつつ、各地で9月に開催される、留学EXPO、 留学フェアの情報をお伝えします。


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*EducationUSAアドバイジングセンターとは?
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皆さんは、EducationUSAのサービスをご存知でしょうか?

EducationUSA とは、米国国務省・教育文化局(ECA)の支援を受けたネットワークです。EducationUSAセンターは、世界に400以上あり、各センターでは、中立的な立場から、留学に関する正確で最新かつ公正な情報を無料で提供しています。

日本においては、全国6箇所(札幌、東京、名古屋、大阪、福岡、沖縄)で主に各地のアメリカンセンターがその任を担っています。2016年4月1日(金)より、東京の2ヵ所(日米教育委員会、アメリカンセンターJapan)で運営していEducationUSAセンターがアメリカンセンターJapanに統合されました。
http://www.fulbright.jp/img/20160229announce.pdf

日米教育委員会で行われてきた、資料室での閲覧や留学相談業務は、アメリカンセンターJapanに移行しましたが、日米教育委員会のウエブサイト上の留学情報は、引き続き運営されています。

EducationUSAセンターでは、ご自分の力で留学を志す方々を対象に、情報提供を行っています。たとえば、留学先となる学校の探し方、入学条件や手続き方法、学校の認定制度や入学適性試験、奨学金、学生ビザなどの情報のほか、よくある質問についての回答などをご用意しています。また、アメリカ留学Expoをはじめ、留学に役立つ様々なセミナーを開催しています。留学をお考えの皆さん、このような公的機関が提供するサービスを是非積極的にご活用ください。

*アメリカンセンターJapan (東京)
  https://americancenterjapan.com/
*日米教育委員会 EducationUSA
  http://www.fulbright.jp/study/index.html

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*アメリカの教育制度
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アメリカ留学の魅力を一言で表すなら、「柔軟で多様性に富んだダイナミックな環境で、世界からの留学生と肩を並べて、豊富な選択肢からハイレベルな教育が受けられる」ということでしょう。

アメリカには約3,000の認定を受けた大学が存在するといわれ、それぞれが独自の入学基準を設けています。日本と異なり文科省のような中央政府機関が法的に認可しているわけではないので、認定制度などアメリカ独自の制度について日本との違いを把握しておきましょう。

*EducationUSA "Understanding U.S. Accreditation"
  https://educationusa.state.gov/understanding-us-accreditation
*日米教育委員会 「アメリカ大学・大学院留学の基礎知識 A. 日本との制度の違い 3.文部科学省の不在・認定制度」
  http://www.fulbright.jp/study/abc/index.html#abc_a_03

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*世界各国からの留学生が切磋琢磨する
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アメリカ留学で得た一番の経験は何かという問いに、「勉強だけでなく、世界各国からの留学生と知り合い、友人となれたことが一生の財産」という答えが多く返ってきます。留学生大国と呼ばれるアメリカでは、世界約220カ国から97.5万人近くの留学生が大学・大学院で学んでいます(2014-15)。留学生の約64%がアジアからの留学生で、留学生出身国別順位で、日本は第8位(19,064人/2014-15)となっています。詳しくは、以下のサイトをご参照ください。

*IIE Open Doors
  http://www.iie.org/Research-and-Publications/Open-Doors/Data/International-Students/Leading-Places-of-Origin#.V4X7W7mCipo
*日米教育委員会 「アメリカにおける留学生の統計」
  http://www.fulbright.jp/study/directory/basic.html

残念なことに、最近日本からアメリカ留学する人数は減少の一途をたどっています。その背景には、少子化や日本経済の停滞(学費捻出の困難さ)、アメリカの大学学費の高騰、日本人学生の英語能力の不足、など複数の要因が複雑にからみ合っていることが推測されます。しかし、アメリカ留学そのものの価値は普遍的であり、"人生の一時期に、母国を離れリベラルな環境で世界各国の留学生と切磋琢磨しながら学ぶこと"が、得がたい経験と成長を個人にもたらすことは疑いありません。加えて、国際的なキャリア開発や研究成果も手中に出来る可能性は高いでしょう。

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*理系大学院留学について
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カガクシャ・ネットの読者の皆様は、理系大学院留学を希望しておられることと思います。

2014年度、アメリカでは54,070の博士号が授与されました。留学生(学生ビザ 保持者)は15,742名、そのうちの日本人は172名でアメリカを除いた国のうち第12位となっています。

博士号取得分野は、理工系分野(生命科学23.1%、物理科学18.2%、工学17.7%)に多くなっています。博士課程で専攻する分野が、学部課程の専攻と同じ学生は、約半数で、分野別には工学・物理科学系に多く、逆に教育学では、専攻を変えて博士号を取得する学生のほうが多くなっています。また博士号を取得する学生の約7割は修士号を取得していますが、生命・ 物理科学分野の学生は、他分野と比較すると修士号を取得していない割合が多くなっています。

(出典:Doctorate Recipients from United States Universities : 2014, National Opinion Research Center)

博士号取得までに要した時間は、平均で大学院課程に入学後7.3年間、大学学部課程修了後では8.8年間となっています。分野別には、教育・人文・社会科学系の分野での学位取得に要する時間のほうが、工学・自然科学系の分野より長くかかる傾向が見られます。また、博士号候補生(Ph.D. Candidate または ABD[ All But Dissertation])となった学生のうち、実際、博士号取得に至ることができた学生はその約半数ぐらいではないか、といわれています。

*日米教育委員会 「アメリカ大学・大学院留学の基礎知識 C.大学院課程 3.博士課程」
  http://www.fulbright.jp/study/abc/index.html

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*留学準備に必要な5 steps
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アメリカ留学の準備には、約1年~1年半かかるといわれています。留学手続きに関する必要な基本事項・ステップを把握して、早めに準備しましょう。以下の5ステップを参考にして、留学手続きの参考にしてください。

Step 1. 選択肢をリサーチ
Step 2. 留学資金
Step 3. 出願手続き
Step 4. 学生ビザを申請
Step 5. 渡米前準備

アメリカには、3,000を越す大学が全米に渡って存在しますので、まず自分の「優先事項」を明確にすることが重要です。

大学選択でのミスマッチを避けるためには、自分の優先事項を明確にした上で、各大学院プログラムのカリキュラムを丁寧に読み込み、自分のニーズにマッチしているか、また学科の研究方針や師事したい研究者を特定することが重要でしょう。

特に博士課程へ進学を希望する方は、どの教授がどこでどのような研究を行っているか等をリサーチする必要があるでしょう。その場合、(現在の)指導教授にアメリカでの専門家をご教示いただく、専門分野学会の論文ジャーナルを読み込み専門家を特定する、などの方法が考えられます。

一般的に博士号候補生となる学生は、自らが研究テーマを選択し、研究計画を立て、実際研究を行えるだけの能力や知識があることが期待されます。指導教授(academic adviser)は、学生が行う研究に対して、意見を述べたり、研究が誤った方向に進んでいる場合に示唆を与えたりすることで指導しますが、あくまでも研究を行う
学生の主体性が重んじられます。

Step 2の留学資金では、奨学金を含めた留学資金計画が重要なポイントになります。各種奨学金は、一般的に締め切りが早いことが多いので、早めの準備・リサーチをこころがけてください。

*日米教育委員会 「よくある質問-奨学金」
  http://www.fulbright.jp/study/res/faq20.html

※フルブライト奨学金は、人文・社会科学の分野が対象で、残念ながら理系分野は対象外(*Public HealthとEnvironmental Studiesは例外)となります。
*フルブライト奨学金 http://www.fulbright.jp/scholarship/index.html
 
留学準備については、以下に紹介するEducationUSAのウェブサイトをご参照ください。
*EducationUSA"Your 5 Steps to U.S. Study"
  https://educationusa.state.gov//your-5-steps-us-study

*日米教育委員会 「留学準備スケジュール」
  http://www.fulbright.jp/study/schedule/index.html

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*2016年EducationUSA関連イベント-「アメリカ留学EXPO」(東京)等
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インターネットが発達する現代社会ですが、ネット上の情報だけでは不安に思う方もいらっしゃるでしょう。東京では、9月10日(土)にアメリカ大使館主催「アメリカ留学EXPO」が開催されます。年に一度開催されるこのイベントでは、アメリカの大学60校が参加し、担当者と直接話せるブースが設けられ、留学経験者と話せる機会も提供されています。また留学に関するセミナーも同時並行で開催され、貴重な情報収集の場となっています。EXPOには、EducationUSAおよび日米教育委員会(フルブライト・ジャパン)もブース出展いたします。ぜひ多くの方にこの機会をご利用いただければ幸いです。

*東京:「アメリカ留学EXPO」

 http://americaexpo.jp/
 日時:2016年9月10日()12:00 - 18:00
 入場無料・入退場自由
 会場:御茶ノ水ソラシティ カンファレンスセンター

また、留学フェアは以下4都市でも開催されますので、併せてご利用ください。

*名古屋:「アメリカ大学フェア2016」
 http://japanese.nagoya.usconsulate.gov/education-usa.html
 日時:2016年9月11()13:00 - 16:00
 会場:名古屋国際センター別棟ホール

*大阪:「アメリカ留学の魅力とその方法」アメリカの大学留学についてのプレゼンテーションとカレッジフェア
 https://www.facebook.com/irckansai/
 https://www.facebook.com/events/900193756756333/
 日時:2016年9月11()13:00 - 16:00
 会場:大阪市立中央図書館 中会議室&イベントスペース

*福岡:「アメリカへ行こう」留学体験談ひろば&カレッジフェア
 http://japanese.fukuoka.usconsulate.gov/fj20160917.html
 日時:2016年9月17日()14:00 - 17:00
 会場:こくさいひろば(アクロス福岡3F)

*沖縄:「アメリカ留学フェア in 沖縄 in 2016」
 http://japanese.naha.usconsulate.gov/
 日時:2016年9月19日(月)13:00 - 17:00
 会場:浦添市てだこホール・市民交流室

EducationUSAアドバイジングサービスは全国6箇所で運営されておりますので、留学を希望される方はご活用ください(各センターのサービス内容は個別のセンターでご確認ください)。

なお、東京のアメリカンセンターJapanでは、定期的にアメリカ留学説明会等のセミナーが開催されています。説明会では、留学経験者のお話を伺える回もあり、実際にface to faceでEducationUSAアドバイザーに質問できる機会もございます。

皆様のアメリカ留学への夢が大きく実現へと近づくことを、お祈りしております。

(出典:日米教育委員会 ウエブサイトより)
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EducationUSA
http://www.fulbright.jp/study/index.html
http://americancenterjapan.com/study/

電話:03-5545-7435 (月・水・金 13:00~17:00)
資料室開館時間: 月-金 13:00-17:00
休館日:土日、日米の祝祭日
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著者略歴

 笹田千鶴(ささだちづる)

 EducationUSA/日米教育委員会(フルブライト・ジャパン)
 シニアEducationUSAアドバイザー

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2016年6月6日月曜日

「留学生リレー日記」最終回 私にとって留学とは、未来への展望

留学生リレー日記、2016年度前期編は今回が最終回になります。今回は、これまで留学生活を紹介してくださった執筆者の皆さんに、留学について一歩引いた視点で質問をしてみました。


1.留学をしてよかったと思いますか?それはなぜですか?

  良かったと思います。留学先では日本での常識が通用しないことが多いです。自分の既存の価値観が覆されたり、これまでと違う物事の考え方をしたりすることで、より幅広い視野での問題解決能力が身についたと思います。
  まだわかりません。期待には応えたいし、見切りには抗いたいと思っています。最後によかったと思えるように、他の留学生とは違った経験や価値を見出していきたいです。
よかったんじゃないかなと思います。やはり多様な人々との出会いが大きいです。文系の研究者の方、音楽・芸術家の方など、日本で理系の学部生をしていた頃には想像もできなかった出会いに恵まれました。ドイツはおそらく世界で最もいい国のうちの1つで、日本が見習わなければいけないことがたくさんあります(逆も多々ありますが…)。新しい場所で、多彩な人と会い、自分を見つめ直していく経験は、少なくとも僕のような引きこもりタイプの人間には、留学なしでは訪 れなかったでしょう。

留学は、あたりまえだと思っていたことを離れ、新しい人と出会うきっかけのようです。違っていること、同じであることを一つひとつ真摯に受け止めて、その先を切り開いてゆく勇気にエールを!

2.留学の前後で自分が変わったと思うことは?

  人見知りをあまりしなくなったのと、行動力が身についた気がします。留学先で困ったことに直面した際、どうしようと悩む前にとりあえず何かしら行動を起こしてみるようになりました。
  まだわかりません。ただ、どうしても変わらない、変えられないところが、環境の変化によって浮き彫りになってきました。例えば、すごく陽気で何事にも積極的になったということはありません。
じゃがいもが主食でも大丈夫になったとか、細かい点では多々ありますが、基本は変わっていないと思います。むしろ、卒業し、就職し、結婚していく日本の同期の方が、自分よりも変化の割合は大きいですね。

たくましく新しい環境に適応しつつ、予想よりも変わっていない自分を再発見するのかもしれませんね。

3.異文化交流のコツについて一言

  アメリカではタクシーの運転手さんでもスーパーの店員さんでも、見ず知らずの他人と世間話をすることが多いです。スポーツなど国籍を問わず楽しめる話題は人との距離を縮めやすいと感じました。また、女性の友人同士だと恋愛相談でも盛り上がります(笑)。
  強いて言えば、面白いと思うこと、面白いと思ってもらうこと、だと思います。ただ、顔を引きつらせて無理矢理面白いと言ってみたり、からっぽのくせに見栄を張ってみても、絵に描いたような交流は出来ませんね。
これは僕が教えてほしいです(笑)
おそらく、先入観をなるべく持たずに、誰に対しても1人の対等な人間として向かい合うことじゃないかなと思います。言語力はもちろんですけど、例えばヨーロッパだったら毎年Eurovisionを観るとか、そうした周りの人がやっていることをとりあえず自分もしてみると溶け 込みやすいかもしれません。

話題を共有して、面白いことを面白いと思う。日本人どうしでも同じですね。言葉も不自由で文化背景も違うと、自分と相手の引き出しの中に同じものがあることに気づくのが難しくなります。スポーツ・恋愛・娯楽といったところから探していくと、思ったより早く共通点を見つけれるようです。

4.将来は何をしたいですか?

  アメリカで研究の仕事に就きたいです。今の生活、研究環境が非常に好きなので、このまま大学で研究を続けていけることが理想です(もちろんプレッシャーも大きいですが)。国際学会に参加して世界中の研究者と交流できるのも楽しいです。
  何か面白いことをしたいと思っています。
僕はずっと思春期のメンタルヘルスに興味があります。思春期(Adolescence)は、脳科学的に見ると、感情や情動を司る大脳辺縁系は十分に発達し ているのに、それをコントロールし自分の行動を律する前頭前野がまだまだ未発達な、人の一生の中で最もあやうく、繊細で、特別な時期です。研究もいいです が、こうした脳科学の知見を活かした社会システムを、世の中に構築していきたいなと今は考えています。

執筆者の皆さん、3ヶ月間の連載へのご協力、ありがとうございました!



留学生リレー日記
第1回 プロローグ(1) アメリカとドイツからこんにちは
第2回 プロローグ(2) じゃがいも&ドライブ&シェアハウス
第3回 大学紹介編(1) いざボストンへ
第4回 大学紹介編(2) 棚から...
第5回 大学紹介編(3) 星を眺めて、哲学にふける
第6回 大学紹介編(4) Q&Aその1
第7回 日常生活編(1) アイスホッケーはじめました
第8回 日常生活編(2) 心理的ハードルが低くなる
第9回 日常生活編(3) チョコとポテトは必需品
第10回 日常生活編(4) Q&Aその2
第11回 トラブル編(1) アメリカの洗礼
第12回 トラブル編(2) ビザが届かない!
第13回 トラブル編(3) 自分が持てる分だけ、買おう
第14回 エピローグ 私にとって留学とは、将来への展望


執筆者プロフィール

  趙 雪薇 (ちょう ゆきばら)
タフツ大学 生物医療工学科の大学院1年生 修士卒業後に渡米
研究内容は細胞外小胞を用いた細胞のリプログラミングへの応用
  滋井 康人(しげい やすと)
テキサスA&M大学 海洋学科大学院1回生 大学院卒業後就職し、社会人留学
構造地質や堆積学等、地質学の習得を目的として留学
川口 雄久(かわぐち かつひさ)
チュービンゲン大学 International Max-Plank Research School of Neural & Behavioral Sciences 博士課程1年目 学部卒業後に渡独、修士修了
研究内容は、セロトニンの視覚情報処理における役割

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発行責任者: 武田 祐史
編集責任者: 日置 壮一郎
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2016年5月30日月曜日

「留学生リレー日記」第13回 自分が持てる分だけ、買おう

トラブル編の第3回はチュービンゲン大学の川口さんの執筆です。何気ないところに思わぬところに落とし穴が...。どんなトラブルにも落ち着いて冷静に対処したいものです。



「分不相応な買い物をしてはいけない。」
経済的な事情も鑑みても、学位留学をしている人たちは、そういったことはしないと思います。それでも、ドイツのような日本に比べて物価が安い外国に、収入がある形で留学してしまうと、ついつい気が大きくなってしまうのが人間というものです。

僕の場合、ドイツに来てすぐは諸事情により野菜・果物を取る機会がなく、みずみずしい生鮮食品に飢えていました。語学コースでできた友人がスーパーに行くというので、たまたまついていったのですが、野菜・果物のなんと安いこと!例えば、りんごは1キロたったの2ユーロでした。これがEUの力か!と感嘆し、りんご、いちご、ぶどう、桃、オレンジ、からの野菜ジュース!とカゴいっぱいに色とりどりの野菜果物たちを詰め込み、レジで会計し物価の安さに再び感嘆したまではよかったものの、思わね落とし穴が!

ドイツはエコの国、エコバックは必須です。僕はそうした準備を全くしておらず、「これ阿修羅さんじゃないと全部持てない」レベルの沢山の野菜果物を必死で両手で抱えて帰宅することになりました。実は袋もレジで売っているのですが、そのときは全く気づきませんでした。帰宅途中、電車の乗り降りでいくつかの野菜・果物は、もう持ち運びは無理と悟り、泣く泣く駅に置いていった記憶があります。

他にも、小型冷蔵庫をネット通販で買ったときのことです。ドイツの場合、配達時に不在だったため、最寄りの集配所に届いてしまうということがありました。取りに行くと「これまた阿修羅さんじゃないと(略)というヘビーさ……。このように「買えるけど、持てない」という過ちを数々犯してきました。「お金があれば何でも買える」と思いがちですが、買ってから家に持って帰るまでが買い物です。こんな当たり前のことを留学当初はてんぱってて忘れてしまってました。留学当初は、とにかく早く生活を落ち着けたい気持ちを抑え、まず自分が落ち着くことが大切だと感じました。



写真:地元のスーパーの様子。ジャガイモは2kgから売ってます。



留学生リレー日記
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第2回 プロローグ(2) じゃがいも&ドライブ&シェアハウス
第3回 大学紹介編(1) いざボストンへ
第4回 大学紹介編(2) 棚から...
第5回 大学紹介編(3) 星を眺めて、哲学にふける
第6回 大学紹介編(4) Q&Aその1
第7回 日常生活編(1) アイスホッケーはじめました
第8回 日常生活編(2) 心理的ハードルが低くなる
第9回 日常生活編(3) チョコとポテトは必需品
第10回 日常生活編(4) Q&Aその2
第11回 トラブル編(1) アメリカの洗礼
第12回 トラブル編(2) ビザが届かない!
第13回 トラブル編(3) 自分が持てる分だけ、買おう
第14回 エピローグ 私にとって留学とは、将来への展望



執筆者プロフィール

  趙 雪薇 (ちょう ゆきばら)
タフツ大学 生物医療工学科の大学院1年生 修士卒業後に渡米
研究内容は細胞外小胞を用いた細胞のリプログラミングへの応用
  滋井 康人(しげい やすと)
テキサスA&M大学 海洋学科大学院1回生 大学院卒業後就職し、社会人留学
構造地質や堆積学等、地質学の習得を目的として留学
川口 雄久(かわぐち かつひさ)
チュービンゲン大学 International Max-Plank Research School of Neural & Behavioral Sciences 博士課程1年目 学部卒業後に渡独、修士修了
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2016年5月23日月曜日

「留学生リレー日記」第12回 ビザが届かない!


トラブル編の第2回はテキサスA&M大学の滋井さんの執筆です。届かなかったのは宅配ピザではなく、ビザです。そういうことが平気で起こるのがすごいところですよね。ビザが届かなくて渡航が半年遅れるなんてことも・・・。


海外での生活は日本とは勝手が違うので、留学を含め海外で長期間滞在したことのある人であれば、何かしらトラブルに見舞われた経験があると思いますし、これから海外で長期滞在するという人は、おそらくそういう経験をすることになると思います。かくいう僕も、渡航前から大小問わずいろいろなトラブルに見舞われました。

一つはビザに関するトラブルです。以前にも書いたように、留学準備から渡航までにそれほど時間がなかったので、特に渡航前の手続きはかなりスケジュールがタイトでした。

大学から正式に合格通知が来たのが7月中旬で、それから留学生事務を担当している部署に、J-1ビザの申請に必要な書類(DS-2019)の発行を依頼したのですが、その際私が提出した書類に不備があるということで再提出を求められました。結果的には不備はなく、担当者の勘違いということだったのですが、それを理解してもらうのに少し手間取ったのと、ちょうどビザの発給システムに遅延が出ていたことが重なり、結局ビザを受け取ったのは渡航日の前日でした。留学までの半年は、本当にギリギリの綱渡りでした。

渡航してからはそれほど大きなトラブルには遭遇していませんが、Wifiがプレゼンの前日に使えなくなったとか、火災警報機が夜中に誤作動して一睡もできなかったとか、ガラガラヘビを道端で見て悲鳴を上げたとかいう事案はありました。これは聞いた話ですが、Travel Signatureを貰わず日本に一時帰国してしまった残念な人がどうやらいたみたいです。彼は留学生事務に連絡して書類を郵送で送ってもらい、無事再入国出来たそうです。

特に事務手続きに関しては、日本の役所や大学事務に比べてこちらははるかに不親切なので、できる限り時間的に余裕を持って申請等した方がいいとつくづく思いました。


写真:日陰に佇むリス (テキサスの野生動物がこんなかわいいやつばかりだったら。。。)




留学生リレー日記
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執筆者プロフィール

  趙 雪薇 (ちょう ゆきばら)
タフツ大学 生物医療工学科の大学院1年生 修士卒業後に渡米
研究内容は細胞外小胞を用いた細胞のリプログラミングへの応用
  滋井 康人(しげい やすと)
テキサスA&M大学 海洋学科大学院1回生 大学院卒業後就職し、社会人留学
構造地質や堆積学等、地質学の習得を目的として留学
川口 雄久(かわぐち かつひさ)
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2016年5月16日月曜日

「留学生リレー日記」第11回 アメリカの洗礼

今週から3週間は海外生活で出会ったトラブルについてお届けします。タフツ大学の趙さんはアメリカへ渡航した直後から病院探しをしたとのこと。ひとつひとつのことに慣れていくまでは、たくさんのトラブルに出会いますね。

 
アメリカに到着したその翌日、私は病院探しに奔走していた。日本を出る直前にブヨに刺され、その部分が長時間のフライトによる血行の悪化で腫れ上がってしまったのだ。アメリカは医療費が非常に高いと聞いていたため心配したが、幸い大学が自動的に加入してくれていた保険が既に有効になっていたようで、大学の保健センターを訪ねたら無料で診療してくれた。

診療室に入り症状を簡単に説明する(ブヨの英単語は事前にバッチリ調査済みである)までは無事に済んだところで、身長と体重を聞かれ答えに詰まる。そう、アメリカでは単位がフィートとポンドなのだ。「分かりません。」と答えると看護師さんが苦笑いしながらその場で適当に測ってくれた。ブヨのことは知っていても自分のことを知らないのではどうしようもない患者である。

その後、処方された強めの飲み薬についてネットで調べてみるとアジア人女性の体型にしてはかなり多い量が処方されていた。結局その薬は放置して飲まず、その数日後、ブヨ刺されは無事治ったのであった。

このように病院に限らずとも、日本の細やかなサービスに慣れているとアメリカでトラブルになることが多々ある。電話がオペレーターに繋がるまで何時間もかかったり、書留郵便が配達されていなかったり。おもちを焼いていたら火災報知器を作動させてしまい、雪の中、消防士の点検が終わるまで待ったこともあった。こういったトラブルも後で考えると留学の楽しい思い出の一つなのかもしれない。


写真:火災報知機を作動させてしまい、消防士の点検を雪の中待つ。



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第11回 トラブル編(1) アメリカの洗礼
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第13回 トラブル編(3) 自分が持てる分だけ、買おう
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執筆者プロフィール

  趙 雪薇 (ちょう ゆきばら)
タフツ大学 生物医療工学科の大学院1年生 修士卒業後に渡米
研究内容は細胞外小胞を用いた細胞のリプログラミングへの応用
  滋井 康人(しげい やすと)
テキサスA&M大学 海洋学科大学院1回生 大学院卒業後就職し、社会人留学
構造地質や堆積学等、地質学の習得を目的として留学
川口 雄久(かわぐち かつひさ)
チュービンゲン大学 International Max-Plank Research School of Neural & Behavioral Sciences 博士課程1年目 学部卒業後に渡独、修士修了
研究内容は、セロトニンの視覚情報処理における役割

2016年5月2日月曜日

「留学生リレー日記」第10回 Q&Aその2

留学生リレー日記も10回目を迎えました。今回は、前3回のみなさんの留学生活の記事で編集部が気になったことに対するQ&Aをお送りします。



Q1. 趙さんの記事で「アイスホッケーをすればいい論文が書けるとの誘い文句でアイスホッケーを始めた」とありますが、論文の執筆に対するプレッシャーはありますか?

論文3本が修了要件なので、プレッシャーはかなり大きいですね。第1著者で最低2本、あと1本は第2著者でも大丈夫です。それ以上の本数となると、先生の指導方針も大きいと思います。先生がテニュアを取るまではとりあえず論文の本数を重視し、取ってからはいい論文をいいインパクト・ファクター(IF)の雑誌に投稿するという傾向があると思います。
修士なので、論文を書く必要はなく、プレシャーはほとんどないです。ただ、自発的に指導教官に対してアピールし、指導教官にテーマを探してもらっており、今年の夏休みの間にプロジェクトをさせてもらう予定です。
プレッシャーはかなり感じますが、趙さんのおっしゃる通り指導教官がまだテニュアではないというのが大きいですね。テニュアになるための業績評価期間である2年以内に実績を出す必要があり、メンバーとして先生をサポートするためにも書かないといけないです。雑誌に関しては、IFが低いものに多く投稿するのもOKですが、基本的にドイツの研究所だと本数はあまり関係なく、IFの高い雑誌に掲載される方が重要とされています。

留学先の先生を選ぶ基準として、先生がテニュアをもっているのかいないのか、どんな雑誌に論文を発表しているのか、という点は必ずチェックしておきたいですね。また、論文を書くプレッシャーというのは、先生がグラントを取るために公表できるデータ・実績が欲しいという側面が大きいと思われます。





Q2. 滋井さんの記事で「人間関係のストレスは留学に来て減った」とありますが、人間関係のストレスはみなさん減るものなのでしょうか?それとも逆に異文化の中で他のストレスが増えるというようなことはないのでしょうか?
私はもともと会社で働いていたので、その頃の社会人生活と比較すると、今は上司からの勤務評定や飲み会もなく、ストレスはかなり減りました。だた、英語の問題や異文化の問題で、悩みを友達にうまく伝えられない、打ち明けられないというストレスはありますね。会話をするときには実際の発言だけではなく、ニュアンス等の部分で気分がうまく伝わらないとフラストレーションがたまるかもしれません。

減ったと思います。日本では建前が大事で、例えば夜遅くまで上の人が残っていたり、みんなが頑張っていたりすると、自分一人帰れない雰囲気があったりしました。また、修論前には頑張って執筆している姿勢を出すことが大事で、長く研究室にいましたが、こちらでは各自が自分の生活を大事にしていて、自由に来て帰ったりしているので、人間関係全般でのストレスが減ったと思います。ただ、やはり渡米した直後は英語でのコミュニケーションに問題があり、プライベートと仕事どちらでも、伝えたい事がうまく伝わらないことが多かったです。

私も人間関係のストレスが少なくなりましたね。ただ逆にとても小さい町なので少々退屈という面はありますね。修士で渡独した際には、大学院の環境に溶け込むのにとても苦労しました。授業についていくのは大丈夫でしたが、友達を作ったり、ドイツでの生活になじんだりするのにとても時間がかかりました。むしろやることがないので、新しいことを始めないと逆に何もないということがストレスに感じますね。だから新しいことに挑戦するハードル非常に下がったと思います。私の場合は、大学の卓球部に参加し、練習をしています。
 
人間関係のストレスはみなさん全体的に減るようですね。ただ語学のコミュニケーション上でのストレスを感じることが多いようですね。順調な留学生生活を送りためにも、何か新しいスポーツや趣味を始めるのがいいのではないでしょうか。





Q3. 川口さんの記事で「仕事で疲れていると週末にひきこもることも結構ある」とありますが、もしインターネットが無かったらどんな留学生活になっているか想像できますか? 
本当に想像がつかないですね(笑 ドイツには、昔から多くの日本人学生が主に音楽を学びに来ていましたが、どうしていたんでしょう。インターネットでは、基本的にSNSを使うことが多いです。最近、電子書籍で日本の漫画を読んだりもしますが、ドイツでは著作権の関係で残念ながら見れない日本のミュージックビデオも多いです。
インターネットが無かったらそもそも論文の検索ができないので、研究が進められません(笑 あと、私はよく実家の両親に電話しているので、それが重要な心の支えになっています。メールがなかったら教授の細かい指示を受けることができなくて不便ですね。毎回面と向かって会うのは大変ですし。
インターネットがないと日常の楽しみがなくなって加速的に枯れていってしまうかもしれませんね(笑 逆に引きこもり体質は物理的にいやでも改善されそうですが。

ひと昔前と比べ、インターネットのおかげで、気軽に日本の親類や友人とも連絡が取れ、留学のハードルも下がったと言えそうです。せっかくの留学生活ですので、現地でしかできないクラブ活動などとうまくバランスをとって、充実した生活を送りたいですね。


Q4. 海外で生活をする上で気になる治安の問題ですが、留学を始めてから何か危険を感じたり、トラブルに遭遇したりしたことはありますか?

 
特に危険な目にあったことはないですが、アメリカは銃社会なので、いつも気を付けるようにしています。最近近くで銃に関わる事件があり、犯人が逃亡するという事件がありました。でも周りのみんなはとても落ち着いているので驚きました。
 
特にありません。カレッジステーションは大学街なので全体として治安がいいです。ただ、テキサスはまもなく大学内に銃の携行が可能になるので、少し注意はしています。
 
全くありませんね。最近ドイツは難民問題を抱えていて、私も新聞やニュースでよく目にしますが、チュービンゲンはとても小さな街なので治安の悪化は全く感じられないですね。ただ、近くの高校の体育館が難民キャンプになっていて、体育の授業ができない、というのは聞きました。

あまり危険な目にあった方はいないようですが、注意をするに越したことはないですね。



留学生リレー日記はまだまだ続きます。次回からのテーマは留学生活で出逢ったトラブルです。
第11回へ続く


留学生リレー日記
第1回 プロローグ(1) アメリカとドイツからこんにちは
第2回 プロローグ(2) じゃがいも&ドライブ&シェアハウス
第3回 大学紹介編(1) いざボストンへ
第4回 大学紹介編(2) 棚から...
第5回 大学紹介編(3) 星を眺めて、哲学にふける
第6回 大学紹介編(4) Q&Aその1
第7回 日常生活編(1) アイスホッケーはじめました
第8回 日常生活編(2) 心理的ハードルが低くなる
第9回 日常生活編(3) チョコとポテトは必需品
第10回 日常生活編(4) Q&Aその2
第11回 トラブル編(1) アメリカの洗礼
第12回 トラブル編(2) ビザが届かない!
第13回 トラブル編(3) 自分が持てる分だけ、買おう
第14回 エピローグ 私にとって留学とは、将来への展望


執筆者プロフィール

  趙 雪薇 (ちょう ゆきばら)
タフツ大学 生物医療工学科の大学院1年生 修士卒業後に渡米
研究内容は細胞外小胞を用いた細胞のリプログラミングへの応用
  滋井 康人(しげい やすと)
テキサスA&M大学 海洋学科大学院1回生 大学院卒業後就職し、社会人留学
構造地質や堆積学等、地質学の習得を目的として留学
川口 雄久(かわぐち かつひさ)
チュービンゲン大学 International Max-Plank Research School of Neural & Behavioral Sciences 博士課程1年目 学部卒業後に渡独、修士修了
研究内容は、セロトニンの視覚情報処理における役割

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発行責任者: 武田 祐史
編集責任者: 日置 壮一郎
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