2013年11月24日日曜日

アメリカ理系大学院留学を実現させるためのノウハウ ~修士・Ph.D. 課程の選択~

※今回は過去のメルマガから人気の記事(2010年10月 Vol.53)をピックアップして配信しています。

10月を担当させていただく今村文昭です。皆様、日米はともに連休だったかと思います。どのように過ごされましたでしょうか?ボストンは紅葉がすばらしく、快晴で、とても快適でした。

今回の記事も、先月の青木さんの紹介に引き続き、「理系大学院留学 -アメリカで目指す研究者への道」から、「修士・Ph.D. 課程の選択」について紹介したいと思います。また、本に記載された内容に加え、私の経験によるちょっとした考えを紹介したいと思います。

大学院留学を考えておられる方、興味のある方にとって何らかの参考になれば幸いです。


アメリカ理系大学院留学を実現させるためのノウハウ
~修士・Ph.D. 課程の選択~

修士・Ph.D. 課程の選択


 修士・Ph.D. 課程の選択については、まず、日本とアメリカの修士課程の違いを認識する必要があります。日本の修士課程では、授業はあくまで卒業単位取得のために受けるものであり、基本的に研究が中心です。

 一方、アメリカでは、修了条件に修士論文が課されないプログラムも多く存在します。授業によっては、ファイナル・プロジェクトと呼ばれる、その授業に関連した研究課題に取り組む場合もありますが、日本とは異なり、研究が中心のカリキュラムではありません。

 従って、アメリカの大学院で研究することに主眼をおくのであれば、Ph.D.課程を選んだ方が良いでしょう。

 ただしアメリカの大学院では、Ph.D. 課程であっても授業に割く時間は日本より多くなるため、研究のみに専念したい場合は、日本で博士号を取得後、ポスドクとして、アメリカへ研究留学するという道もあります。

 アメリカでは、このようなプログラムの特徴(修士課程:ほぼ授業のみ、Ph.D. 課程:授業+研究)があるため、どちらを選択するかということが、学位取得後の進路と密接に関わってきます。

 アメリカでの就職を考えるなら、修士のみ修了した場合では、高校の先生、投資銀行、特許事務所、コンサルタント会社、研究支援産業の営業、販売促進と、研究には直接関わらないポジションとなる可能性が大きいでしょう。

 修士取得後に研究職に着任する場合は、Ph.D.取得者の下で働く必要があったり、技術補佐員(technician)扱いだったり、待遇面や権限の違いが生じる可能性が高いので、それらも考慮に入れた上で、自分に合ったプログラムを選ぶ必要があります。

 一方、Ph.D.を取得しておくと、社会的に一人前の研究者とみなされるので、製薬企業、シンクタンク、製造業、国立研究所、大学など、直接研究に関わるポジションに、それなりの権限を持って就職する傾向にあります。もちろん例外もあって、修士卒業でもかなり優秀な場合は、企業や大学においてPh.D.取得者と同じようなポジションで研究している人もいます。

 注意点として、日本ではどの分野においても、修士・博士の両課程がありますが、アメリカの場合、特に生命科学系などにおいては、Ph.D. 課程しか存在しない場合があります。

 また、Ph.D. 課程では財政援助が一般的であるのに対して、修士課程ではその人数が限られていたり、財政支援があっても、Ph.D.課程のものには及ばなかったりする場合もあります。修士論文の提出が必要とされない、授業履修のみで修了できるプログラムの場合、財政援助は非常に限られている、と考えた方がよいでしょう。

私(今村)の経験による事柄

上記のように、研究者としての価値、卒後の就職に、修士課程を出るか、博士課程を出るかは大きく異なってきます。基本的に、米国において修士号のみ持つ人が研究者としてみなされることはほぼ無いでしょう。

 では、研究者を目指す人にとって、修士課程の価値とはなんでしょうか。

 種々の案があるかと思いますが、私は修士課程は専門性を定める分岐点として価値があると思っています。

 私は、日本で理工系の化学を専攻しておりました。(それこそ先日、ノーベル化学賞を受賞された北海道大学の鈴木章名誉教授と米パデュー大学の根岸英一特別教授が確立された領域です。)

 私は理工系の道を外れて、生命科学系の応用分野に貢献できる領域で研究したい・・と思い、北米の栄養学の修士課程に進みました。

 私は研究者にはなりたいと思っておりましたが、実は、どういう研究がしたいという具体的なアイデアは無かったのです。とにかくも、化学を生かせてなお、一般社会に貢献できる領域と思っていました。栄養学・環境学など、頭にありました。

 そして修士課程において北米大学院レベルの教育課程で栄養疫学という領域に惹かれその道博士を取る道を選びました。栄養疫学、および疫学は、日本では教育課程も歴史の浅い領域ですので、結果的に大正解でした。

 私はそんな道を歩んできたので、米国の修士課程について、私がそうだったように、「研究者になりたいが、学士を取った時点で自分の道を決めたくない/決められない」という人にとって向いていると思っています。

 研究者を志す人にとって、専門領域分野を変えたりすることには、やはりリスクが伴いますが、北米の大学院は、強い意志と(潜在的な)実力があれば、専門領域を変えることは容易です。

 北米大学院の修士課程では、多様な選択肢を思い描くこと、さらにいろいろな志を持った人が同じ学を修めることを可能です。北米の大学院の1つの魅力ではないでしょうか。


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執筆者紹介
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今村文昭
上智大学理工学部化学科卒業(2002年)、コロンビア大学医学部栄養学科修士課程卒業(2003年)、タフツ大学フリードマン栄養科学政策大学院栄養疫学博士課程卒業(2009年)、2009年よりハーバード公衆衛生大学院疫学部門にてPost-doctoral Fellow、2013年よりケンブリッジ大学Medical Research Council の疫学部門にて研究者として赴任
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